刑法(証拠隠滅罪)

証拠隠滅罪(11) ~「証拠隠滅罪の故意」を説明~

 前回の記事の続きです。

証拠隠滅罪の故意

 証拠隠滅罪(刑法104条)は故意犯です(故意についての詳しい説明は前の記事参照)。

 証拠隠滅罪の故意の故意の成立には、

他人の刑事事件に関する証拠を隠滅・偽造・変造し、又は偽造・変造された証拠を使用することの認識があることを要し、かつ、それをもって足りる

とされます。

 当該他人の利益を図り、あるいは、国家の司法作用を妨害するという積極的な意思の存在を要しません。

 この点を判示したの以下の裁判例です。

東京高裁判決(昭和27年5月31日)

 裁判官は、

  • 証拠隠滅罪が成立するために要する犯意としては、他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅することの認識があればたり、必ずしも、その人の利益または不利益を図り、国家権力等を妨害する積極的意思の存在を要件とするものではない

と判示しました。

 また、他人の被疑事件につき、その嫌疑を受けている事実が真実であるかどうかの認識は故意の存在と無関係とされます。

 この点を判示した以下の裁判例です。

東京高裁判決(昭和36年7月18日)

 裁判官は、

  • 被疑事実を隠蔽するためその証拠を隠滅したとするには、当該被疑事実の内容たる事実が真実であることを認識することを要しない
  • 一定の被疑事実として捜査の対照となっていることを認識して、その被疑事実について捜査の適正を誤らしめ、少くとも誤らしめるおそれのある証拠を偽装し、あるいはこれを隠滅するときは証拠隠滅の罪を構成するものと解しなければならない

と判示しました。

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