平均への回帰 ~出来・不出来はランダム変動する~

うまくできない人を怒鳴っても、うまくできるようにはならない

 うまくいったときに褒める→褒めると、調子にのって気が緩むから、次はうまくできない

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

 上記のような価値観は、私が中学生だった二十数年前(平成10年頃)においては、親や先生が、当たり前に持っていた価値観でした。

 バスケットボール部だったのですが、ミスをすれば監督から怒鳴られたり、ボールをぶつけられたりするのは当たり前でした。

 当時は、パワハラという言葉は存在していません。

 しかしながら、今振り返ってみると、

 うまくいったときに褒める→褒めると、調子にのって気が緩むから、次はうまくできない

という価値観は正しいと思いません。

 心理学・脳科学的に説明すると、

 褒められる

→承認欲求が満たされる

→脳の報酬系が刺激される

→脳から快楽物質であるドーパミンが分泌され、爽快な気分になる

→脳の前頭葉の機能が向上し、記憶力や思考力が向上する

という流れが起きるので、褒めるという行為は、人のパフォーマンスを向上させます。

 少なくとも、パフォーマンスが低下させられることはありません。

 次に、

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

という価値観に対しても正しいとは思いません。

 心理学・脳科学的に説明すると、

 怒鳴られる

→恐怖により防衛本能が働き、血管が収縮し身体が動かなくなる

(血管が収縮するのは、猛獣などの外敵に襲われたときに、出血を抑えるための人間古来からの防衛能力です)

→脳からストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、強いストレスを感じる

→ストレスを感じることで、脳の前頭葉の機能が激減し、思考力・記憶力が低下する(何も考えられなくなる)

→頭は回らなくなり、身体は動かなくなる

という流れが起きるので、人のパフォーマンスを低下させます。

 私が中学生だった二十数年前は、

 うまくいったときに褒める→褒めると、調子にのって気が緩むから、次はうまくできない

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

という的外れな価値観が、当たり前のように正当化されていました。

 なぜ、このような的外れな価値観が存在していたのでしょうか?

平均への回帰

 うまくいったときに褒める→褒めると、調子にのって気が緩むから、次はうまくできない

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

と、親・学校の先生・会社の上司が考えているのなら、その観察結果は正しいといえます。

 あくまで観察結果は正しいということです。

 人は、うまくできることもあれば、うまくできないこともあるからです。

 この観察結果は、「平均への回帰」として知られる現象です。

(「平均への回帰」とは、出来・不出来、良い・悪いなどの結果は、ランダム変動する現象のことをいいます)

 観察結果は、人の出来・不出来がランダム変動した結果です。

 プロ野球選手が、打率3割を超えることもあれば、3割を下回ることもあるのと一緒です。

 しかし、

 褒めると、次はうまくできなくなる

 怒鳴ったおかげで、次はうまくできるようになる

という推論は間違っています。

 褒められるときというのは、特別にうまくできたときです。

 しかし、特別にうまくできた次も、特別にうまくできる可能性は低く、「平均への回帰」により、次は、うまくいかない方向に回帰の幅が振れる可能性の方が高くなります。

 プロ野球選手でいうなら、褒められるときというのは、打率3割を超えたときです。

 しかし、打率3割はいつまでもキープできないので、しばらくすれば、打率3割を下回る方向に結果が傾きます。

 このように、褒めた後に、「平均への回帰」により、出来の良い方から、出来の悪い方にベクトルが振れる現象に因果関係を求めると、

 うまくいったときに褒める→褒めると、調子にのって気が緩むから、次はうまくできない

という推論ができあがります。

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

という推論ができあがる理由も同じです。

 怒鳴られるときというのは、特別に失敗したときです。

 精神を病んでネガティブループに陥っていない限りは、特別な失敗は続きません。

 次は上昇します。

 「平均への回帰」により、次は、うまくいく方向に回帰の幅が振れる可能性の方が高くなるからです。

 この現象に因果関係を求めると、

 失敗したときに怒鳴る→怒鳴ったおかげで、次はうまくできる

という推論ができあがります。

 「平均への回帰」の現象を知らない親・先生・上司は、子供・生徒・部下の出来が悪いと怒鳴りつけ、その叱責は実際には効果がないにもかかわらず、次回には、たまたま子供・生徒・部下がうまくやるという見返りを手にします。

 すると、「怒鳴るのは、相手を成功に導く良い行為だ」と考えてしまうのです。

まとめ

 「平均への回帰」とは、出来・不出来、良い・悪いなどの結果が、ランダム変動する現象のことです。

 うまくいく方向に針が振れれば、次は、うまくいかない方向に針が戻る(回帰する)ような現象です。

 「平均への回帰」はどこにでも見られる現象です。

 にもかかわらず、「平均への回帰」の現象に対する知識がなく、起こった現象に説明をつけるために、的外れの因果関係をこしらえる人が後を絶ちません。

 (人は、起こった出来事に対して、因果関係を見出さずにいられないバイアスをもっています。人は、原因追求思考が大好きなのです。)

 起こった現象に対して、真っ先に因果関係をこしらえるのではなく、まず最初に、「平均への回帰」の当てはめを行うことをおすすめします。

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