法律(刑法)

正当行為とは?【その2】「自救行為」を解説

 前回の記事では、正当行為のうち、以下の「① 法令行為」、「② 正当業務行為」について説明しました。

 今回は、「③ 自救行為」について説明します。

  1. 法令行為
  2. 正当業務行為
  3. 自救行為
  4. 被害者の承諾による行為
  5. 被害者の推定的承諾による行為為
  6. 労働争議行為

自救行為とは?

 自救行為とは、

国家に頼らず、自らの力で自分の権利を守ること(自力救済すること)

をいいます。

 極端な例ですが、たとえば、自分の家族を殺された場合、犯人は国家により裁かれます。

 しかし、「国家による裁きを待っていられない!」「自の力で犯人に復讐して自分の権利を守る!」と考え、復讐をして犯人を殺すことは、自救行為と位置づけることができます。

 ですが、本来、自救行為は禁止されています。

 どんな場合でも国家が、国民の権利を守り、救済することになっているためです。

 日本では、国民が、自らの力で、自らの権利を守り、自らを救済する「自力救済」を前提としていないのです。

 しかし、自力救済を全く禁止してしまったら、国家による救済を待っていられない緊急事態が起こったときに、国家は、国民に対し、「自力救済はせずに、そのままやられろ」と宣告する状態になってしまいます。

 なので、自力救済を完全に禁止することは妥当ではありません。

 そのため、自力救済は、一定の限度で認められているのです。

 自力救済をして、それが犯罪行為になっても、違法性が阻却され、犯罪を成立させないのです。

 自力救済は、違法性阻却事由となるのです。

「正当防衛・緊急避難」と「自救行為」の違い

 自分の身を自分で守るという点において、正当防衛・緊急避難は、自救行為と同じです。

 しかし、正当防衛緊急避難は、自救行為とは区別されます。

 区別される理由は、

  • 正当防衛・緊急避難は、危険が目の前に差し迫った場合に行う緊急行為
  • 自救行為は、危険は過ぎ去ったが、侵害された状態が残っている場合に行う緊急行為

であるという点にあります。

自救行為の例

 たとえば、道端でひったくり被害に遭い、バッグをひったくられた場合に、バッグを取り返すために、ひったくりを追いかけて捕まえ、実力行使をしてバッグを取り返すのは、自救行為になります。

自救行為が認められ、無罪判決となった判例

裁判所

福岡高等裁判所(昭和45年2月14日判決)

事件内容

 店舗の賃借権をもつAが、賃借権に基づき、店舗の使用を続けるため、賃貸人が店舗に施したカギを壊して、別のカギに取りかえ、店舗内に自動車を格納しました。

 Aは、カギを壊した器物損壊罪、店舗内に自動車を格納した不動産侵奪罪で起訴されました。

判決内容

 裁判所は、店舗の賃借権をもつAの行動は、店舗の占有を奪回する行為であり、自救行為として法律上許されるとし、Aを無罪としました。

まとめ

 自救行為は、法律に規定がありません。

 つまり、法律は、基本的には、侵害に対する救済は、

  国家によりなされるべき

という立場をとっています。

 現に、上記のように、下級裁判所では自救行為が認められた判例は存在しますが、最高裁判所が自救行為を認めた判例はないようです。

 そのくらい自救行為というのは、基本的に認められていないのです。

 安易に犯罪になるような自救行為を行って、有罪にならないように注意が必要です。

 何らかの犯罪被害に遭ったら、まずは警察を呼びましょう。 

次回

 今回は、以下の①~⑧の正当行為のうち、「③ 自救行為」について説明しました。

  1. 法令行為
  2. 正当業務行為
  3. 自救行為
  4. 被害者の承諾による行為
  5. 被害者の推定的承諾による行為
  6. 労働争議行為

 次回は、「④ 被害者の承諾による行為」、「⑤ 被害者の推定的承諾による行為」について説明します。

「正当行為とは?」に関する記事まとめ

正当行為とは?【その1】「法令行為」「正当業務行為」を解説

正当行為とは?【その2】「自救行為」を解説

正当行為とは?【その3】「被害者の承諾による行為」を解説

正当行為とは?【その4】「労働争議行為」を解説