前回の記事の続きです。
この記事では、虚偽有印公文書作成罪、虚偽無印公文書作成罪(刑法156条)を「虚偽公文書作成罪」といって説明します。
「公務員の身分のある者」と「公務員の身分のない者」が共謀して虚偽公文書作成罪を行った場合の虚偽公文書作成罪の共同正犯の成否
虚偽公文書作成罪は、その主体(犯人)が職務上当該文書を作成する権限を有する公務員であることを要する身分犯です。
ここで、「公務員の身分のある者」と「公務員の身分のない者」が共謀して虚偽公文書作成罪を行った場合に、「公務員の身分のない者」に対して虚偽公文書作成罪の共同正犯(共犯)が成立するかが問題になります。
文書の作成権者である公務員と、非公務員あるいはその権限を有しない公務員とが、共同して虚偽公文書を作成した場合には、作成権者の行為が虚偽公文書作成罪に当たることはもちろんですが、非公務員あるいは作成権限を有しない公務員についても、判例は虚偽公文書作成罪の共同正犯になるとしています。
大審院判決(明治44年4月27日)
村長の虚偽公文書作成行為に助役が加担した事案です。
裁判所は、
- 助役は、村長の補助機関に過ぎざれば、村長自らその資格を冒用して虚偽の文書を作成するに当たり、助役これに加功するも、その助役は自己の職務に関し、虚偽の文書を作成したるものというを得ず
- 公務員と共謀してその公務員の職務に関し、虚偽の文書を作成するにおいては、公務員に非ざる者もまた刑法156条における犯罪の正犯たるを免れず
と判示しました。
大審院判決(明治44年4月17日)
執達吏(執行官)の虚部文書作成行為に、公務員ではない私人が加担した事案です。
裁判所は、
- 執達吏と共謀してその職務に関する公文書を偽造したる一私人は、刑法第156条の犯罪者たることを免れず
と判示しました。