前回の記事の続きです。
この記事では、虚偽有印公文書作成罪、虚偽無印公文書作成罪(刑法156条)を「虚偽公文書作成罪」といって説明します。
この記事では、虚偽公文書偽造罪と
- 虚偽公文書行使罪
- 加重収賄罪
- 道路運送車両法違反
との関係を説明します。
① 虚偽公文書行使罪との関係
虚偽公文書作成罪とこれの使用罪(虚偽公文書行使罪:刑法158条1項)とは、手段と結果の関係にあるので牽連犯となります。
② 加重収賄罪との関係
虚偽公文書作成罪、虚偽公文書行使罪の事実が加重収賄罪(刑法197条の3)の事実のうち収賄の刑の加重をすべき原因たる不正行為に該当する場合には、「加重収賄罪」と「虚偽公文書作成罪、虚偽公文書行使罪」の両罪は観念的競合になります。
- 加重収賄と各有印虚偽公文書作成、同行使とは、一個の行為で数個の罪名に触れる場合であるから、右判示第一の各罪については、刑法法54条1項前段、10条により最も重い加重収賄の罪の刑により処断すべく…
と判示ました。
③ 道路運送車両法違反との関係
自動車検査員が内容虚偽の保安基準適合証を作成して虚偽の証明をした場合には、道路運送車両法違反のほか、虚偽有印公文書作成罪が成立し、両罪は観念的競合になるとした裁判例があります。
高松高裁判決(昭和58年9月19日)
車高短車(自動車の車高を低くした改造車)を自動車整備業者(みなし公務員)に持ち込み、自動車検査員に依頼して、自動車が保安規準に適合しないことを認識しながら、保安基準適合証を作成させた事案で、道路運送車両法違反のほか、虚偽有印公文書作成罪が成立し、両罪は観念的競合になるとしました。
裁判官は、
- 道路運送車両法94条の5第2項、107条2号の罪と虚偽有印公文書作成罪の各保護法益、規定の体裁刑罰の内容等に徴すると、前者が成立する場合に後者の適用が否定される理由はなく、それぞれに該当する事由がある以上両罪が成立し、しかも観念的競合の関係にあると解される
と判示しました。