刑法(公正証書原本不実記載罪等)

公正証書原本不実記載罪(10)~本罪の行為⑧「公正証書の作成手続に多少の瑕疵があっても公正証書原本不実記載罪は成立する」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、公正証書原本不実記載罪、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)を適宜「本罪」といって説明します。

公正証書の作成手続に多少の瑕疵があっても公正証書原本不実記載罪は成立する

 一般に、公文書偽造罪(刑法155条1項)については、当該文書が一般人をして真正な公文書であると信ぜしめるに足りる形式、外観を具備すればよいとされるのが通説・判例です(詳しくは有印公文書偽造罪(10)の記事参照)。

 公正証書原本不実記載罪においても、公正証書の作成手続に多少の瑕疵があっても本罪は成立します。

 参考にある以下の判例がります。

最高裁判決(昭和37年3月1日)

 公正証書の作成手続上の瑕疵と公正証書原本不実記載罪の成否が争点になった判例です。

 裁判所は、

  • 公証人に対し虚偽の申立をなし、公証人をして公正証書の原本に不実の記載をさせた場合において、嘱託人の一方が日本語を解しないのにかかわらず、公証人が公正証書を作成するに当たり通事を立ち会わせず、通事をして証書の趣旨を右嘱託人に通訳させなかった等その作成手続上の瑕疵があったとしても、当該公正証書が一般人をしてその内容を真正なものと誤信させるに足ると認められるときは、公正証書原本不実記載罪が成立する

と判示しました。

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