前回の記事の続きです。
この記事では、公正証書原本不実記載罪、電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)を「本罪」といって説明します。
譲渡担保の目的で、真実に所有権を移転する場合における売買の登記は、公正証書原本不実記載罪を構成しない
譲渡担保の目的で、真実に所有権を移転する場合における売買の登記が、本罪を構成しないことは通説的見解となっています。
なお、定款に株式譲渡制限の定めがある会社の一人株主が債権者に対して全株式を譲渡担保として提供したものの、株主共益権の帰属が争われた事案について、譲渡担保契約当事者間の合理的な意思解釈として株主共益権は債権者に帰属させる旨の合意があったと認められる事情の下は、一人株主である被告人が債権者に無断で臨時株主総会を開催して取締役の解任・選任を行った旨の議事録を作成し、役員が変更された旨の登記中請をし、商業登記簿にその旨の記載をさせた行為は本罪に当たるとした判例があります(最高裁決定(平成17年11月15日)。