これから7回にわたり、虚偽診断書作成罪、虚偽検案書作成罪、虚偽死亡証書作成罪(刑法160条)を説明します。
この記事では、虚偽診断書作成罪、虚偽検案書作成罪、虚偽死亡証書作成罪を適宜「本罪」といって説明します。
虚偽診断書作成罪、虚偽検案書作成罪、虚偽死亡証書作成罪とは?
虚偽診断書作成罪、虚偽検案書作成罪、虚偽死亡証書作成罪は、刑法160条において、
医師が公務所に提出すべき診断書、検案書又は死亡証書に虚偽の記載をしたときは、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する
と規定されます。
罪名
医師が公務所に提出すべき診断書に虚偽の記載をしたときは「虚偽診断書作成罪」となります。
医師が公務所に提出すべき検案書に虚偽の記載をしたときは「虚偽検案書作成罪」となります。
医師が公務所に提出すべき死亡証書に虚偽の記載をしたときは「虚偽死亡証書作成罪」となります。
趣旨
本罪は、私文書の無形偽造を例外的に処罰する規定です。
文書の偽造には、有形偽造と無形偽造とがあり、
- 有形偽造は、文書の作成権限がない人が他人名義の文書を作成すること(文書偽造罪が成立する)
- 無形偽造は、文書の作成権限がある人が事実でない内容の文書を作成すること(虚偽文書作成罪が成立する)
をいいます。
本罪は、私文書の無形偽造を処罰する唯一の規定です。
私文書については、その有形偽造・変造を全面的に処罰するのに対し、その無形偽造は原則としては不可罰となっているので、虚偽私文書作成罪は存在しません。
しかし、医師の診断書、検案書、死亡証書は、権利・義務の得喪・変更に重大な関係を有することが多いため、特にそのような文書に限定して、例外的に私文書の無形偽造(虚偽私文書作成)をを処罰こととし、本罪が設立されています。
要するに、本罪は、特に重要な私文書の無形偽造を処罰する規定であるといえます。
国外犯
本罪についても、国外犯が罰せられます(刑法3条3号)。
本罪の特別刑法
本罪の特別刑法において、私文書の無形偽造を処罰する規定として、
があります。