刑法(電磁的記録不正作出・共用罪)

不正作出電磁的記録共用罪(3)~「供用未遂」「罪数、他罪との関係」を説明

 前回の記事の続きです。

供用未遂

 不正作出公電磁的記録共用罪、不正作出私電磁的記録共用罪には未遂規定(刑法161条の2第4項)の適用があります。

 不正作出電磁的記録供用罪については、実行の着手と既遂との間に時差が存する場合があり、供用が未遂の段階にとどまる場合があります。

 例えば、磁気ストライプ部分に不正に作出された磁気面を有する勝馬投票券を自動払戻し機に挿入しようとしたが、怪しまれて係員に制止され、又は張込み中の警察官に検挙されたため、実際に挿入するにいたらなかった場合などが典型例といえます。

 このような供用の未遂段階にある行為についても、偽造文書行使の未遂の場合と同様に処罰することが相当であるばかりでなく、電磁的記録の場合はこれに基づく電子計算機による情報処理が機械的になされるものであることから、不正に作出された電磁的記録が人の事務処理の用に供されたときには、直ちに実害を生じる危険性が大きいと考えられるため、その未遂を処罰する必要性は偽造文書の行使未遂の場合より一層高いといえるとされます。

罪数、他罪との関係

 罪数、他罪との関係は、

私電磁的記録不正作出罪(5)~「『電磁的記録不正作出罪』と『不正作出電磁的記録共用罪』との関係」「①文書偽造罪、②電子計算機使用詐欺罪、③不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反、④電磁的記録毀棄罪との関係」を説明

で説明しています。

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