前回の記事の続きです。
この記事では、刑法161条の罪(偽造有印私文書行使罪、変造有印私文書行使罪、偽造無印私文書行使罪、変造無印私文書行使罪、虚偽診断書行使罪、虚偽検案書行使罪、虚偽死亡証書行使罪)を「本罪」といって説明します。
本罪の故意
本罪は故意犯です(故意についての詳しい説明は前の記事参照)。
なので、本罪が成立するためには、本罪を犯す故意が必要です。
本罪における故意は、
偽造・変造の文書・図画、あるいは虚偽記載がされた診断書、検案書、死亡証書を行使又は用に供することを認識、認容すること
です。
必ずしも、作成名義人との関係において当該文書等の内容が真実であるという趣旨を主張した上で交付等をする必要はないとされています(詳しくは前の記事参照)。
本罪の行為
本罪の行為は、
私文書偽造罪等(刑法159条)、虚偽診断書等作成罪(刑法160条)における文書及び図画(とが)を行使すること
です。
なお、虚偽の記載をした診断書、検案書、死亡証書における行使とは、公務所に提出する行為のことを指します。
「行使」の概念
「行使」の概念は以下の記事で説明しています。
文書偽造・変造の罪(14)~行使の概念①「偽造・変造文書の『行使』とは?」「偽造・変造・虚偽文書行使罪を認めるに当たり、実害発生は不要である」を説明
文書偽造・変造の罪(15)~行使の概念②「文書偽造・偽造罪の成立を認めるに当たり、犯人が『文書の内容が真実である』との主張をしている必要はない」を説明
文書偽造・変造の罪(16)~行使の概念③「本来の用法に従ったものではないが、真正な文書として偽造文書を用れば、偽造・変造文書行使罪、虚偽文書行使罪が成立する」を説明
文書偽造・変造の罪(17)~行使の概念④「偽偽造運転免許証・外国人登録証明書を携帯しただけでは、偽造公文書行使罪は成立しない」を説明
文書偽造・変造の罪(18)~行使の概念⑤「偽造・変造・虚偽文書の『備付け行使』」を説明
文書偽造・変造の罪(19)~行使の概念⑥「偽造・変造・虚偽文書の行使の相手方に制限はない」を説明
文書偽造・変造の罪(20)~行使の概念⑦「偽造文書等の行使の相手が文書が偽造等されたものであることを知っていた場合は、偽造文書等の行使罪は成立しない」を説明
文書偽造・変造の罪(21)~行使の概念⑧「利害関係のない者に対する偽造文書等の行使でも、公衆の信用が害されるおそれがあるときは、偽造文書等の行使罪が成立する」を説明
文書偽造・変造の罪(22)~行使の概念⑨「偽造・変造文書、虚偽文書の行使罪の既遂時期」を説明
文書偽造・変造の罪(23)~行使の概念⑨「偽造・変造した文書を写真コピーした場合、公文書偽造罪が成立する」を説明
文書偽造・変造の罪(24)~行使の概念⑩「偽造・変造・虚偽文書のファクシミリ、スキャナーを用いた行使」を説明