前回の記事の続きです。
この記事では、刑法161条の罪(偽造有印私文書行使罪、変造有印私文書行使罪、偽造無印私文書行使罪、変造無印私文書行使罪、虚偽診断書行使罪、虚偽検案書行使罪、虚偽死亡証書行使罪)を「本罪」といって説明します。
他罪と関係
本罪と
との関係を説明します。
公正証書原本不実記載罪・不実記載公正証書原本行使罪との関係
公正証書作成の代理委任状を偽造・行使し(私文書偽造罪・偽造私文書行使罪)、公証人をして公正証書の原本に不実の記載をさせ、これを行使したときは(公正証書原本不実記載・不実記載公正証書原本行使罪)、委任状の偽造・行使は公正証書原本不実記載・同行使の手段となるので、「私文書偽造罪・偽造私文書行使罪」と「公正証書原本不実記載・不実記載公正証書原本行使罪」とは牽連犯の関係に立ちます。
この点を判示したの以下の判例です。
大審院判決(明治42年2月5日)
裁判所は、
- 公正証書作成の代理委任状を偽造し、公証人をして公正証書を作成せしめ、これを行使したる場合には、該委任状の偽造行為は、公正証書偽造行使の所為の手段にほかならざれば、刑法第54条(※牽連犯の規定)を適用処断すべきものとす
- 従って、右2個の所為を個々独立するものとし、同法第47条(※併合罪の規定)を適用したる判決は不正なり
と判示しました。
同様に、他人の名義を冒用して自動車運転免許証下付願及び履歴書を偽造行使し、運転手試験を受けて合格し、当該吏員をして名義人を運転手とする不実の内容を自動車運転手免許証に記載させ、その下付を受けてこれを行使したという事案において、私文書の偽造・行使罪と免状不実記載・同行使罪は互いに手段結果の関係にあり、牽連犯になるとした判例があります。
大審院判決(昭和5年3月27日)
裁判所は、
- 他人の名義を冒用して自動車運転手免許証下付願及び履歴書を偽造行使し、運転手試験を受け、これに合格し、当該吏員をして名義人を運転手とする不実の記載を自動車運転手免許証に為さしめ、その下付を受け、これを行使したる場合においては、免許証下付願及び履歴書の偽造行使罪と、免状に不実の記載を為さしめこれを行使したる罪との間には、互いに手段結果の関係あるものとす
と判示しました。