刑法(不同意性交等罪)

不同意性交等罪(1)~「不同意性交等罪とは?」を説明

 これから15回にわたり、不同意性交等罪(刑法177条)を説明します。

不同意性交等罪とは?

 不同意性交等罪とは、被害者が同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態で、

  • 性交
  • 肛門性交
  • 口腔性交
  • 膣・肛門に身体の一部(陰茎を除く)を挿入する行為
  • 膣・肛門に物を挿入する行為

をすることで成立する犯罪です。

 不同意性交等は、令和5年7月13日に施行された新しい法律であり、従来の強制性交等罪、準強制性交等罪を統合した上、不同意性交等罪が成立する条件について明確に規定し、従来の強制性交等罪の成立要件である「暴行又は脅迫」といった手段によらずとも、被害者の同意を得ずにわいせつな行為を行った場合に犯罪が成立することとしたものです。

条文

1⃣ 不同意性交等罪は、刑法177条において、

1項 前条(※刑法176条:不同意わいせつ罪)第1項各号に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、性交、肛門性交、口腔性交又は膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの(以下この条及び第179条第2項において「性交等」という。)をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、5年以上の有期拘禁刑に処する

2項 行為がわいせつなものではないとの誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、性交等をした者も、前項と同様とする。

3項 16歳未満の者に対し、性交等をした者(当該16歳未満の者が13歳以上である場合については、その者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者に限る。)も、第1項と同様とする

と規定されます。

2⃣ 刑法177条の1項~3項の構成は以下のようになっています。

 1項は、

  • 同意しない意思の形成・表明・全うが困難な状態での性交、口腔性交、肛門性交等を不同意性交等罪とすること
  • 配偶者間においても不同意性交等罪が成立すること

が示されています。

 条文中にある「婚姻関係の有無にかかわらず」の部分は、配偶者間においても不同意性交等罪が成立することを示しています。

 2項は、性交、口腔性交、肛門性交等がなされるに当たって被害者に錯誤が生じている場合のうち、性的自由・性的自己決定権が侵害されたと評価できる場合、つまり、

  • 被害者に行為がわいせつなものではないとの誤信がある場合
  • 被害者に性交等の行為をする者について人違いがある場合(例えば、夫だと思っていた)

を処罰の対象とすることが示されています。

 3項は、

  • 被害者に対して性交、口腔性交、肛門性交等をすること自体で処罰されることとなる年齢を16歳未満とすること(16歳未満の被害者に対しては「同意しない意思 の形成・表明・全うが困難な状態」という要件は不同意性交等罪の成立に不要とするもの)
  • 被害者が13歳以上であるときは、その被害者が生まれた日より5年以上前の日に生まれた者が性交等の行為者(犯人)である場合にその犯人を処罰すること

が示されています。

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