刑法(不同意性交等罪)

不同意性交等罪(13)~共犯②「共犯からの離脱」「不同意性交の目的ではない自らが先に行った暴行・脅迫などの結果を利用して被害者を不同意性交した場合も、不同意性交等罪が成立する」を説明

 前回の記事の続きです。

共犯からの離脱(共謀関係の消滅

 不同意性交の共謀をした者は、自分が不同意性交を断念しても、共犯者をも翻意させて不同意性交を中止させなければ、共謀関係は消減しません(高松高裁判決 昭和41年6月14日)。

 なお、共犯からの離脱の考え方については前の記事参照。

 不同意性交等罪の共謀関係の消滅を認めた事例として、以下の裁判例があります。

大阪高裁判決(昭和41年6月24日)

 裁判所は、

  • 被告人Cは、中学の同級生でかねて顔見知りのDを強姦しようと企て、Iに命じて同女をJ山に連れ出した上、GやIを通じてH喫茶店から被告人Aを呼び寄せ、同被告人及びGと共に、同女をタクシーに乗せてO地下グリルまで連れ出したが、同店内で被告人Cは、右Dに気付かれなようにひそかに、被告人A、Gに同女を旅館に連れ込んで強姦しようとその意中を打ち明け、被告人Aらもこれに賛成し、更に被告人CはNに連絡して自動車を持ってこさせ、同人も右犯行に加わることを承知したので、ここに被告人C、同A、G及びNの4名は、付近の旅館で同女を強姦することを共謀の上、被告人CがNの運転する自動車に同女を乗せて旅館に入り、被告人A、Gが後から続いて旅館に入るという手はずのもとに、同被告人らは付近のP旅館に行つたが、休業を理由に入室を断わられたため、犯行の場所をQ旅館に変えることとし、先の手はずどおり、被告人CがNの運転する自動軍に同女を乗せて右Q 旅館に連れ込み、続いて被告人A、GもNが折り返し迎えに来た自動車に乗り同旅館に着き、同旅館の主人Lに対し、被告人Cの入った客室に案内せよと求めたところ、同女から断わられて押問答をしているうち、この騒ぎを聞いて被告人Cも客室から出て来たので、被告人A、G及びNは被告人Cを交えて相談した結果、被告人Aら3名は本件強姦の実行を断念して引き返すことになり、被告人Cもこれを了承したため、被告人AはG、Nと共に同旅館から退去し、被告人Cだけがなおも旅館にとどまり、単独でDに対する強姦を遂げたことが認められる
  • 以上認定のように、被告人Aが一旦は被告人Cらと強姦の共謀を遂げたとはいえ、 G、Nと共に、右犯行の着手前右共謀に基づく犯罪の実行を断念する意思を表明し、共謀者被告人Cもこれを了承したことにより、一旦成立した共謀関係は犯行の着手前にすでに消滅したと解するのが相当であるから、その後における被告人Cの強姦行為について、被告人Aが共謀共同正犯としての刑責を負うべきいわれはない
  • 従って、原判決が、その判示のとおり被告人Aが被告人Cと共謀して本件強姦行為に及んだ旨認定したのは事実を誤認したことが明らかである

と判示し、被告人Aに対し、共謀関係の消滅を認め、Aには強制性交等罪(現行法:不同意性交等罪)の共同正犯は成立しないとしました。

不同意性交の目的ではない自らが先に行った暴行・脅迫などの結果を利用して被害者を不同意性交した場合も、不同意性交等罪が成立する

 不同意性交の目的ではない自らが先に行った暴行・脅迫などの結果を利用して被害者を不同意性交した場合も、不同意性交等罪が成立します。

 たとえば、不同意性交の目的ではなく、強盗の目的で暴行・脅迫を行い、相手が抵抗不能になっていることをチャンスと思い、不同意性交した場合でも、不同意性交等罪が成立します。

 参考となる裁判例として、以下のものがあります。

大阪高裁判決(昭和33年12月9日)

 裁判所は、

  • 刑法第177条前段にいわゆる13歳以上の婦女に対する強姦罪(現行法:不同意性交等罪)は、犯人自ら(責任無能力者を道具として利用する場合を含む)又は他の共犯者が加えた暴行又は脅迫の手段により、婦女の反抗を著しく困難ならしめて、姦淫する場合に成立するものである
  • 而して、その暴行又は脅迫の手段は、必ずしも強姦の手段として行つたものであることを必要とするものではなく、たとえば、犯人自ら又は他の共犯者が強盗の手段として暴行又は脅迫を加えたため婦女が畏怖しているに乗じ姦淫を遂げるが如き場合には、姦淫に際し改めて暴行又は脅迫を加えなくとも、先に犯人又は他の共犯者が強盗の手段として加えた暴行又は脅迫を利用する場合にも、等しく強姦罪を構成する

と判示し、暴行・脅迫の手段は、強制性交の手段として行ったものでなくても、強姦罪(現行法:不同意性交等罪)が成立するとしました。

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