刑法(不同意性交等罪)

不同意性交等罪(7)~「実行の着手時期」「既遂時期」を説明

 前回の記事の続きです。

 不同意性交等罪(刑法177条)の「実行の着手時期」と「既遂時期」を説明します。

※「実行の着手時期」と「既遂時期」の基本概念の説明は前の記事参照

不同意性交等罪の「実行の着手時期」

 不同意性交等罪の「実行の着手時期」は、

「同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態」で性交、口腔性交、肛門性交等がなされる現実的危険性を有する行為が開始された時点

となります。

 そして、上記行為が開始された後、性交、口腔性交、肛門性交等が実行されれば、不同意性交等罪は既遂となります。

 上記行為が開始されたが、被害者が抵抗するなどし、性交、口腔性交、肛門性交等が実行されなければ、不同意性交等罪は未遂となり、不同意性交等未遂が成立するにとどまります。

不同意性交等罪の既遂時期

 不同意性交等罪(刑法177条)の既遂時期は、

  • 被害者の膣内、口腔内、肛門内に陰茎を挿入した時点

    又は

  • 膣内、肛門内に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入した時点

で既遂に達します。

 陰茎を被害者の性器に没入した時点で既遂に達するので、射精することを要しません。

 この点について判示した以下の判例があります。

大審院判決(大正2年11月19日)

 裁判所は、

  • 強姦罪(現行法:不同意性交等罪)の既遂は、交接作用、すなわち陰茎の没入をもって標準となすべきものにして、生殖作用を遂げたるを必要とせず

と判示し、性器を被害者の性器に没入した時点で強制性交等罪は既遂となるとしました。

 強制性交等罪(現行法:不同意性交等罪)の既遂を認めるにあたり、陰茎の没入は、一部で足りるとする判例があります(仙台高裁判決 昭和30年5月31日)。

 学説では、性器の結合で足りるとする説もあります。

 いずれにせよ、不同意性交等罪の既遂を認めるにあたり、陰茎全部の没入は要しないと解されています。

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