刑法(16歳未満の者に対する面会要求等の罪)

16歳未満の者に対する面会要求等の罪(4)~「罪数の考え方」「他罪との関係」を説明

 前回の記事の続きです。

罪数の考え方

16歳未満の者に対する面会要求罪(刑法182条1項)と16歳未満の者に対する面会罪(刑法182条2項)の関係

 「16歳未満の者に対する面会罪」(刑法182条2項)は、「16歳未満の者に対する面会要求罪」(刑法182条1項)の面会要求行為の結果として面会行為に至った場合を加重処罰の対象とするものです。

 したがって、一連の行為で、1項の「16歳未満の者に対する面会要求罪」と2項の「16歳未満の者に対する面会罪」の両罪が成立する場合には、1項の「16歳未満の者に対する面会要求罪」は2項の「16歳未満の者に対する面会罪」に吸収され、2項の「16歳未満の者に対する面会罪」のみが成立することとなります。

他罪との関係

① 不同意わいせつ罪、不同意性交等罪との関係

1⃣ 本罪と不同意わいせつ罪、不同意性交等罪との関係について、

  • 「16歳未満の者に対する面会要求罪」(刑法182条1項)の面会要求行為

   又は

  • 「16歳未満の者に対する面会罪」(刑法182条2項)の面会行為

が行われた後に、

   又は

に当たる行為が行われた場合、「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」と「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」の両罪が成立するとされます。

 理由は、「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」と「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」とでは、保護法益が異なることが挙げられます。

 「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」は、

「16歳未満の者が性被害に遭う危険性のない状態」を保護法益

とします。

 これに対し、「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」は、

性的自由・性的自己決定権を保護法益

とします。

 このように保護法益が異なる上、「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」は「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」の予備罪として設けられたものではないため、「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」と「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」の両罪が成立するとされます。

2⃣ 上記のように

①「16歳未満の者に対する面会要求罪」又は「16歳未満の者に対する面会罪」

②「不同意わいせつ罪」又は「不同意性交等罪」

の両罪が成立する場合で、①の罪が②の罪の手段と結果の関係となっている場合は、①の罪と②の罪とは牽連犯の関係になるとされます。

② 不同意わいせつ罪(被害者に自身のわいせつ映像を撮影させる行為)、性的姿態等撮影罪、児童ポルノ禁止法違反との関係

 被害者に対し、被害者に同意する意思がないのに被害者自身の性器や乳房を露出した姿態をとらせてそれを自撮りさせるなどして撮影させた場合、不同意わいせつ罪(刑法176条)が成立する場合があります。

 これを踏まえ、16歳未満の被害者に対し、被害者自身の性器や乳房を露出した姿態をとらせてそれをスマートフォンで撮影させ、そのわいせつ映像を犯人に送信することを要求し、犯人がそのわいせつ映像を受信して犯人のスマートフォンに保存した場合、

  1. 不同意わいせつ罪(刑法176条
  2. 16歳未満の者に対する映像送信要求罪(刑法182条3項
  3. 性的姿態等撮影罪(性的姿態撮影等処罰法2条1項
  4. 児童ポルノ禁止法違反(同法7条

が成立します。

 ①~④の罪の罪数関係は、①~④の罪の行為が、社会的見解上一個のものと評価される場合には①~④の罪は観念的競合の関係になり、一罪となります。

 なお、②16歳未満の者に対する映像送信要求罪と①不同意わいせつ罪(被害者に自身のわいせつ映像を撮影させる)とは、手段又は結果となる場合があり、その場合は②と①の罪は牽連犯の関係になります。

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