前回の記事の続きです。
前々回の記事では、賭博罪の「賭金」の没収の考え方を説明しました。
前回の記事では、賭博罪の「賭博用具」の没収の考え方を説明します。
今回の記事では、賭博罪の「換金用現金・両替用現金」の没収の考え方を説明します。
賭博罪の「換金用現金・両替用現金」の没収の考え方
ゲーム機賭博においては、通常、賭客は賭博終了後その獲得点数に応じて店員から現金を受け取ることとなりますが、店側がこの「換金用に準備する現金」は、犯罪供用物件(犯罪行為の用に供しようとした物、刑法19条1項2号後段)に該当するかが問題になります。
裁判例で、これを肯定したものがあります。
東京地裁判決(昭和58年9月27日)
裁判所は、
- 本件で手提金庫内にあった現金50万5000円(但し内訳は1万円札19枚、5千円札3枚、千円札300枚)はいずれも賭博後の清算に際し客にゲーム機の得点1点を100円の割合で換金する目的で準備されていたものであることが証拠上明らかである
- そして、このような清算のための換金行為は賭博行為そのものではないけれども、清算資金が店内に準備されていればこそゲーム終了後直ちにその場で客の求めに応じて換金されるとの約束を客も信用し賭博行為に応じているのが実情であるから、そうしてみると清算行為は賭博行為と密接に関連した補助行為と考えられ、そのような目的で準備される現金は、刑法19条1項2号にいう「犯罪行為の用に供せんとした物」に該当すると考えるのが相当である
と判示しました。
また、「両替用現金」は没収できるかについて、刑法19条1項2号の「犯罪行為の用に供しようとした物」に該当するとして没収できるとした裁判例があります。
東京地裁判決(昭和59年11月5日)
裁判所は、
- (両替準備金)前認定事実によれば、本件店舗1階部分の両替準備金14万円及び同2階部分の両替準備金9000円は、いずれも判示犯行の用に供せんとした物と認めることができるので、刑法19条1項2号の物件にあたる
と判示しました。