刑法(常習賭博罪)

常習賭博罪(1)~「常習賭博罪とは?」を説明

 これから19回にわたり、常習賭博罪(刑法186条1項)を説明します。

常習賭博罪とは?

 常習賭博罪は、刑法186条1項において、

常習として賭博をした者は、3年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

 常習賭博罪は、賭博罪(刑法185条)の加重類型を定めたものです。

 刑が加重されることの根拠については、

  • 非難可能性の増大によるとする見解
  • 違法性の増大によるとする見解

とがあります。

 賭博常習者であるがゆえに単純賭博罪に比して刑が加重されることについて、これは憲法14条に反するものではないことが判例で示されています。

最高裁判決(昭和26年8月1日)

 裁判所は、

  • 刑法186条の常習賭博罪が同185条の単純賭博罪に比し、賭博常習者という身分によって刑を加重していることは所論のとおりである
  • そして右加重の理由は賭博を反復する習癖にあるのであって、即ち常習賭博は単純賭博に比しその反社会性が顕著で、犯情が重いとされるからである
  • そして、賭博常習者というのは、賭博を反復する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法14条にいわゆる社会的身分と解することはできない
  • されば刑法186条の規定をもって憲法14条に違反するものであるとの所論は到底これを採用することができない

と判示しました。

最高裁判決(昭和37年4月24日)

 裁判所は、

  • 憲法14条は、すべての国民が人種、信条、性別、社会的身分又は門地等の差異を理由として政治的、経済的、又は社会的関係において法律上の差別的処遇を受けないことを明らかにして法の下に平等であることを規定したものであるところ、犯人の処罰は、かかる理由に基く差別的処遇ではなく、特別予防及び一般予防の要請に基いて各犯罪各犯人毎の妥当な処置を講ずるものであるから、その処遇の異なることのあるべきは当然であることは昭和23年(れ)第435号同年10月6日大法廷判決(集2巻11号1275頁)の示すところであり、賭博常習者というのは、賭博を反復する習癖、即ち犯罪者の属性による刑法上の身分であるが、憲法14条にいわゆる社会的身分と解することはできないから刑法186条の規定をもって憲法14条に違反するものであるとすることができないことも昭和25年(れ)第1219号同26年8月1日大法廷判決(集5巻9号1709頁)の明らかにしているとおりである

と判示しました。

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