刑法(常習賭博罪)

常習賭博罪(5)~「常習賭博罪の常習性の認定方法」を説明

 前回の記事の続きです。

常習賭博罪の常習性の認定方法

常習賭博罪の常習性は、諸般の事情を総合的に斟酌して判断される

1⃣ 常習賭博罪(刑法186条1項)における常習性(つまり、慣行的に賭博行為をする習癖)は、

  • 現に行われた賭博の種類
  • 賭金の多寡
  • 賭博の行われた期間、度数
  • 前科の有無

などの諸般の事情を総合的に斟酌して判断されます。

最高裁判決(昭和25年3月10日)

 裁判所は、

  • 賭博の常習とは、犯人に反覆して賭博をする習癖があることをいうのであって、必ずしも賭博の前科のあることを要するものではない
  • そしてその習癖のあらわれた賭博行為であるか否やは現に行われた賭博の種類、賭金の多寡、賭博の行われた期間、度数、前科の有無等諸般の事情を斟酌して裁判所の判断すべき事項である

と判示しました。

大阪高裁判決(昭和49年9月27日)

 裁判所は、

  • 常習性の存否は、賭博罪の前科の有無、賭博の性質、方法、期間、度数、賭金額などの諸事情を総合して判断されなければならない

と判示しました。

大審院判決(昭和13年4月15日)

 定職なく賭博により生計を維持していることが常習性認定の資料とされた判決です。

 裁判所は、

  • 賭博の常習性を認むるに当たり(中略)被告人が定職なく専ら右賭博の収益により生計を維持し居る事実を総合してこれを認定するは、毫も妨げなきなり

と判示しました。

2⃣ 個々の事情のみでは常習性を認めるに不十分な場合でも、それらを総合して常習性を認めることは可能です。

最高裁判決(昭和23年6月29日)

 裁判所は、

  • 賭博の前科があること、2、3回続けて賭博をしたこと等その他論旨に挙げているような事実はそれらが各独立して一つ一つでは常習を認めるに不充分であることは論旨の言うとおりであろう
  • しかし、それらが加わり合うとその全体によって常習を認めるに充分となる場合は無論あるので原審が本件被告人につきその示した各資料を総合して常習を認めたのは相当である

と判示しました。

最高裁判決(昭和25年11月28日)

 裁判所は、

  • 賭博の前科のあること、2、3回続けて賭博をしたこと等を各独立して一つ一つでは常習を認めるに不充分であっても、これらが全体として常習を認めるに充分な場合のあることは、当裁判所の判例とするところである(昭和23年(れ)第369号同年6月29日第3小法廷判決)

と判示しました。

常習性の判断は、裁判所の自由心証をもってなされる

 常習賭博罪の常習性の判断は、裁判所の自由心証をもってなされます。

 この点を判示したのが以下の判例です。

大審院判決(明治44年11月13日)

 裁判所は、

  • 被告人に賭博の常習ありとの事実は、賭博罪の構成要件たる事実と同じく、刑法第186条における犯罪事実に属するをもってこれを認むるにつき、あらこれ選ぶところなく裁判所は自由に証拠を取捨判断し得べし

と判示しました。

大審院判決(大正3年5月20日)

 裁判所は、

  • その如きは裁判所の職権事項たる事実裁量の範囲に属し、裁判所は前科及び事案の犯情が常習の事実を認むるに足りるや否やその自由なる心証をもって判断することを得べし

と判示しました。

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