刑法(常習賭博罪)

常習賭博罪(6)~「賭博前科による常習性の認定の考え方①」を説明

 前回の記事の続きです。

賭博前科による常習性の認定の考え方①

 常習賭博罪(刑法186条1項)の常習性認定の考え方は、

  • 賭博前科による常習性の認定の考え方
  • 賭博の反覆累行の事実による常習性の認定の考え方
  • 賭博の態様による常習性の認定の考え方

に分けることができます。

 まずは、賭博前科による常習性の認定の考え方を説明します。

賭博前科と常習賭博罪の常習性との関係

 賭博罪の前科は、常習賭博罪の常習性を基礎づける重要な事実となります。

 賭博の前科のみによって賭博の常習性を認定し得る場合もありますが、前科があるからといって必ずしも常習性を認定しなければならないものではないし、前科がなければ常習性が認定できないというものでもありません。

 この点に関する以下の以下の判例があります。

大審院判決(大正3年5月20日)

 裁判所は、

  • 犯人の前科ある事実は、必ずしも常にこれによりてその後の賭博行為を常習犯と認めざるべからざるものに非ざると同時に、前科ある事実により常習賭博罪を認定するは不法にあらず

と判示しました。

大審院判決(大正3年12月18日)

 裁判所は、

  • 常習賭博罪は、習癖として賭博行為を実行するにより成立するものなれば、数年前の賭博前科を有する者にして更に賭博行為を為したる場合において、該前科ある一事をもって直ちに常習を推測すべからざることもちろんなりといえども、右前科の基本たる賭博の行為と当該賭博行為とを総合して常習賭博の事実を認定するも不法に非ざるのみならず、本案賭博行為が累次反覆せられ、かつ賭金高比較的多額に上がる事実の如きは、これを資料として常習賭博を認定するを妨げざるなり

と判示しました。

最高裁判決(昭和25年2月10日)

 裁判所は、

  • 賭博の前科がありながら更に賭博をした事実から賭博の常習性を認定することができることは論を俟たない

と判示しました。

最高裁判決(昭和26年8月1日)最高裁判決(昭和30年12月13日)

 裁判所は、

  • 賭博の前科のみによって賭博の常習性を認定することは必ずしも違法ではなく

と判示しました。

最高裁判決(昭和24年3月8日)

 裁判所は、

  • 被告人が賭博の前科を有しないことや、いわゆる博徒の類でないことは、賭博の常習性を認定する妨げとはならない

と判示しました。

最高裁判決(昭和25年3月10日)

 裁判所は、

  • 賭博の常習とは犯人に反覆して賭博をする習癖があることをいうのであって必ずしも賭博の前科のあることを要するものではない

と判示しました。

仙台高裁秋田支部判決(昭和31年8月21日)

 裁判所は、

  • 常習賭博を認定するに当っては必ず賭博の前科あることを必要とするものではなく

と判示しました。

東京高裁判決(昭和32年1月17日)

 裁判所は、

  • 刑法第186条第1項の常習性を認定するには特定の資料殊に賭博の前科あることを要するものではなく

と判示しました。

高松高裁判決(昭和32年6月11日)

 裁判所は、

  • 賭博の常習性の認定については、その前科の有無はもとより重要な資料となるものの一つであるが、必ずしもこれのみをもって常習性認定資料としなければならないものではない

と判示しました。

東京高裁判決(昭和49年4月17日)

 裁判所は、

  • 刑法第186条第1項の常習性を認定するには特定の資料殊に賭博の前科があることを要するものではなく

と判示しました。

大阪地裁判決(昭和50年3月19日)

 裁判所は、

  • 賭博関係の前科の存在は、その認定資料として軽視できないものであるが、右前科の不存在が必然的にその常習性の否定を導くわけではなく

と判示しました。

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