これから13回にわたり、賭博開張図利罪、博徒結合図利罪(刑法186条2項)を説明します。
賭博開張図利罪とは?
賭博開張図利罪は、刑法186条2項において、
- 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する
と規定されます。
なお、「博徒を結合して利益を図った」場合は、博徒結合図利罪が成立します(詳しくは賭博開張等図利罪(13)の記事参照)。
賭博開張図利罪は、
犯人が自ら主宰者となり、その支配下に賭博をさせる一定の場所を提供し、寺銭・入場料等の名目で利益の取得を企図することによって成立する罪
です(最高裁判決 昭和25年9月14日)。
「賭博場の開張」の意味
賭博開張図利罪の条文(刑法186条2項)にある「賭博場を開張する」とは、
犯人が自ら主宰者となり、その支配下に賭博をさせる一定の場所を提供すること
をいいます(最高裁判決 昭和25年9月14日)。
賭博場で行われる賭博の種類・方法や賭銭授受の方法は問わない
賭博場で行われる賭博の種類・方法や賭銭授受の方法は問いません。
この点を判示したのが以下の判例です。
大審院判決(大正15年2月22日)
裁判所は、
- 賭場において行われたる賭博の種類方法の如きは、もとより同罪構成要件たる事実に属せざる
と判示しました。
大審院判決(昭和15年12月7日)
裁判所は、
- 賭場において行われたる賭博の方法、換すれば、その勝敗を決する方法は、賭銭授受の手段等は、該犯罪の構成要件たる事実に属せざる
と判示しました。
賭客が博徒であるか否か、また賭博行為が反復して行われるものであるか否かは、賭場開張図利罪の成否に影響しない
賭客が博徒であるか否か、また賭博行為が反復して行われるものであるか否かは、賭場開張図利罪の成否に影響しません。
この点を判示したのが以下の判例です。
大審院判決(大正3年2月25日)
裁判所は、
- その賭博を為す者は、博徒たると否と、また賭博行為を反復せし事実あると否とは敢えて問うに非ず
と判示しました。
賭場で賭博を行う者の数の多少は、賭場開張図利罪の成否に影響しない
賭場開張図利罪の成立を認めるに当たり、開張した賭場で賭博を行う者の数の多少は問いません。
この点を判示したのが以下の判例です。
大審院判決(大正13年1月28日)
裁判所は、
- その賭場において、賭博を為したる者の多寡、その誰なりやは、賭場開張図利罪の成否に影響なきものとす
と判示しました。
主体(犯人)
1⃣ 賭博開張図利罪の主体(犯人)に制限はなく、博徒又は賭博常習者でなくてもよいです。
この点を判示したのが以下の判例です。
大審院判決(大正15年9月25日)
裁判所は、
- 犯人に博徒又は賭博常習者たる身分あることを要するものに非ず
- 蓋し、賭博罪と賭場開張罪とは、刑法同一条章の下に規定せられたりといえども、各その性質並びに構成要件を異にせる別個独立の犯罪にして、ただ単に常習賭博罪を規定せる同一条中に賭場開張罪の存在せる一事をもって賭場開張者には賭博常習者たる身分あることを要すと為すは正当なるものに非ず
と判示しました。
2⃣ 開張者がその開張に係る賭博に参加したからといって開張者でなくなるものではありません。
この点を判示したのが以下の判例です。
大審院判決(明治42年5月27日)
裁判所は、
- 開張者の自ら博奕に関与したると否とは、その成立に何らの影響あることなし
- 而して、賭場開張罪は、賭博罪とその構成要件を異にするものなれば、同一被告人にして賭場開張者となり、賭博者となりて、二罪を犯すことあるべきもちろんにして、所論の如く二相抵触するものにあらず
と判示しました。
大審院判決(明治43年4月19日)
裁判所は、
- 開張者自から相手方となりて賭博を為すための賭場を開張する場合においても成立す
と判示しました。
大審院判決(大正3年2月4日)
裁判所は、
- 開張者自ら賭客の対手人となるも、これがため賭場開張罪の成立に何ら影響するところなき
と判示しました。