これから10回にわたり、刑法190条の罪(死体遺棄罪、死体損壊罪、死体領得罪、遺骨等遺棄罪、遺骨等損壊罪、遺骨等領得罪、棺内蔵置物遺棄罪、棺内蔵置物損壊罪、棺内蔵置物領得罪)を説明します。
刑法190条の罪(死体遺棄罪、死体損壊罪等)とは?
刑法190条は、死体遺棄罪、死体損壊罪等を規定した条文であり、
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する
と規定します。
- 死体を遺棄した場合の罪名は、「死体遺棄罪」となります。
- 死体を損壊した場合の罪名は、「死体損壊罪」となります。
- 死体を領得した場合の罪名は、「死体領得罪」となります。
- 遺骨、遺髪を遺棄した場合の罪名は、「遺骨等遺棄罪」となります。
- 遺骨、遺髪を損壊した場合の罪名は、「遺骨等損壊罪」となります。
- 遺骨、遺髪を領得した場合の罪名は、「遺骨等領得罪」となります。
- 棺に納めてある物を遺棄した場合の罪名は、「棺内蔵置物遺棄罪」となります。
- 棺に納めてある物を損壊した場合の罪名は、「棺内蔵置物損壊罪」となります。
- 棺に納めてある物を領得した場合の罪名は、「棺内蔵置物領得罪」となります。
これから上記刑法190条の罪を「本罪」といって説明します。
保護法益
本罪は、
社会的秩序としての一般的な宗教的感情・習俗及び宗教的平隠
を保護法益とします。
本罪は、財産権の保護を目的とする財産罪ではなく、死者に対する社会的習俗としての宗教的感情を保護するものです。
本罪は、死者に対する宗教的感情を保護するものなので、財産権の保護を目的とする窃盗等の財産罪とは、罪質を異することから、死体等や棺に納めてある物(納棺物)につき所有権等の財産権を有する者も、本罪の主体(犯人)となり得えます。