刑法(死体遺棄罪等)

死体遺棄罪等(9) ~ 他罪との関係③「傷害致死罪、放火罪との関係」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、刑法190条の罪(死体遺棄罪、死体損壊罪、死体領得罪、遺骨等遺棄罪、遺骨等損壊罪、遺骨等領得罪、棺内蔵置物遺棄罪、棺内蔵置物損壊罪、棺内蔵置物領得罪)を「本罪」といって説明します。

本罪と①傷害致死罪、②放火罪との関係

 この記事では、本罪(刑法190条)と、

  1. 傷害致死罪刑法205条
  2. 放火罪

との関係を説明します。

① 本罪と傷害致死罪との関係

 傷害致死罪と死体遺棄罪とは、併合罪の関係になることが、以下の判例で示されています。

最高裁判決(昭和34年2月19日)

 この判例で、裁判官は、

  • 死体遺棄の行為は、常に必ずしも傷害致死の行為に伴うものではなく、身体傷害により人を死に致した後、さらに死体を遺棄するにおいては、傷害罪のほかに死体遺棄罪を構成することもちろんである

と判示し、傷害致死罪と死体遺棄罪が併合罪の関係になることを示しました。

② 本罪と放火罪との関係

 建造物内において人を殺害した上、犯跡を隠す目的で放火した場合、死体損壊の行為は保護法益を異にするから、死体損壊罪刑法190条)は放火罪には吸収されず、両罪は観念的競合(1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合)となります。

 参考となる以下の判例があります。

大審院判決(大正12年8月21日)

 裁判官は、

  • 放火罪と死体損壊罪とは、その性質を異にするをもって、放火行為により死体を損壊したるときは、1個の行為にして2個の罪名に触れるものとす

と判示しました。

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