これから9回にわたり、特別公務員職権濫用罪(刑法195条)を説明します。
特別公務員暴行陵虐罪とは?
特別公務員暴行陵虐罪は、刑法195条において、
1項 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑に処する
2項 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする
と規定されます。
特別公務員暴行陵虐罪は、公務員職権濫用罪(刑法193条)とは異なり、
職務の執行に当たって職務行為には含まれない違法な行為(暴行、陵虐、加虐の行為)をした場合
を処罰するものです。
特別公務員暴行陵虐罪は、特別公務員職権濫用罪(刑法194条)と同様、1項において、主体(犯人)を「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」とし、人に対して強制処分をすることの多い刑事手続に関係する者としています。
さらに、2項において、「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者」を主体にとり込んでいます。
これは、拘禁された者を看守し、又は護送する場合も、上記の「職務の執行に当たって職務行為には含まれない違法な行為(暴行、陵虐、加虐の行為)」が犯されやすいことに着目したものと考えられています。
保護法益
特別公務員暴行陵虐罪の保護法益は、
「国家の拘禁作用の公正の維持」及び「被拘禁者の生命身体等の保護」
です。