刑法(特別公務員暴行陵虐罪)

特別公務員暴行陵虐罪(2)~「本罪の主体(犯人)」を説明

 前回の記事の続きです。

特別公務員暴行陵虐罪の主体(犯人)

 特別公務員暴行陵虐罪は、刑法195条において、

1項 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の拘禁刑に処する

2項 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする

と規定されます。

 特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条)の主体(犯人)は、

1項で「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」

とし、

2項で「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者」

とします。

1項の「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」とは?

1⃣ 1項の主体(犯人)は、「裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者」です。

 これは、前条の特別公務員職権濫用罪(刑法194条)の主体(犯人)と同一です。

 なので、説明は特別公務員職権濫用罪(2)の記事を参照ください。

2⃣ 裁判・検察・警察以外の「人を拘束する権限のある者」は本罪の主体にはなりません。

 この点に関し、少年補導員が、刑法195条1項の特別公務員暴行陵虐罪にいう警察の職務を補助する者に当たらないとした最高裁決定があります。

※ 少年補導員は、少年の非行防止や健全育成を目的として、警察署長や公安委員会から委嘱された非常勤地方公務員です。

最高裁決定(平成6年3月29日)

 最高裁は、

  • 非行少年等の早期発見・補導等を行う少年補導員は、警察署長から私人としての協力を依頼され、警察官と連携しつつ少年の補導等を行うものであって、警察の職務を補助する職務権限を何ら有するものではなく、刑法195条1項にいう警察の職務を補助する者に当たらない

としました。

2項の「法令により拘禁された者を看守し又は護送する者」とは?

 2項の主体は、「法令により拘禁された者を看守し、又は護送する者」です。

 看守とは、

拘禁された者が逃亡あるいは拘禁の目的を害するような行為に出ることを防止するため、監視する者

をいいます。

 護送とは、

被拘禁者を自己の支配下において場所的移動を行うこと

をいいます。

 看守又は護送は、看守する者、護送する者の任務として行われることを要します。

 その任務は、臨時的に任務として行うものでもよいです。

「法令により拘禁された者を看守し、又は護送する者」とは、看守者逃走援助罪の主体と同じである

 2項の主体である「法令により拘禁された者を看守し、又は護送する者」は、看守者逃走援助罪は(刑法101条)の主体と同じです。

 なので、看守者逃走援助罪(2)の記事の説明も参照ください。

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