前回の記事の続きです。
第三者供賄罪の行為
第三者供賄罪(刑法197条の2)の行為は、
- 職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をすること
です。
この記事では、
- 「職務に関し」
- 「請託を受けて」
- 「賄賂」
- 「供与させ、又は供与の要求若しくは約束」
の意義を説明します。
①「職務に関し」とは?
第三者供賄罪にいう職務は、本罪の主体(犯人)である公務員の職務であり、第三者のそれではありません。
「職務」の意義は、単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(11)の記事をご確認ください。
②「請託を受けて」とは?
第三者供賄罪は、「請託」(公務員に対して、一定の職務行為を行うよう依頼すること)を受けることを単なる刑の加重原因としている受託収賄罪(刑法197条1項後段)と異なり、請託を受けることを犯罪の構成要件要素としており、この点は事前収賄罪(刑法197条2項)と同じです。
請託の内容や請託を受けることの内容は、受託収賄罪の場合と同じなので、受託収賄罪(2)の記事をご確認ください。
③「賄賂」とは?
賄賂の意義・内容については、収賄罪の基本類型である単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(2)の記事をご確認ください。
④「供与させ、又は供与の要求若しくは約束」とは?
「供与させ」とは?
1⃣ 「供与させ」とは、
- 第三者に賄賂を受け取らせること
をいいます。
贈賄者が第三者に賄賂を提供したが、第三者が受け取らなかった場合は、「供与の要求」又は「供与の約束」にとどまります。
2⃣ 第三者が賄賂を贈賄者から受け取るにあたり、第三者が賄賂であることを知る必要はありません。
3⃣ 一般的には、第三者が賄賂を受け取る行為とその行為を行う旨の認識とが必要ですが、例えば、第三者の銀行口座に振り込ませたような場合には、振込みの時点で供与せしめたといえると解されています。
これは、銀行口座自体に振込みを受ける意思が包括的に存在するためです。
これに対して、第三者の郵便受けに入れさせたような場合は、第三者が、それを警察署に届け出るなどして受領の意思のないことが明白な行為に出ていれば供与させたとはいえず、「供与の要求」又は「供与の約束」にとどまります。
「供与の要求」とは?
1⃣ 「供与の要求」とは、
- 公務員が贈賄者に対し、第三者に賄賂を供与するよう意思表示をすること
をいいます。
2⃣ 単に公務員が直接贈賄者に賄賂を要求するだけでは、受託収賄罪の賄賂要求罪(刑法197条1項後段)が成立するにすぎません。
3⃣ 第三者は特定されているのが通常ですが、A 、B、 C のいずれかといったような選択的な場合でも差し支えありません。
4⃣ 贈賄者が、公務員からの「供与の要求」に応ずることは不要であり、公務員が「供与の要求」の意思表示をしたことをもって第三者供賄罪が成立します。
「供与の要求」は公務員の一方的行為でよいということです。
5⃣ このほか、「要求」の意義は、収賄罪の基本類型である単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(20)の記事をご確認ください。
「供与の要求」とは?
1⃣ 「供与の約束」とは、
- 公務員と贈賄者との間で、贈賄者が第三者に賄賂を供与することについて合意すること
をいいます。
2⃣ 第三者が選択的でも足りることは、要求の場合と同じです。
とりあえず約束をし、第三者はおって決めるという場合でも、賄賂の授受について合意が成立していれば第三者供賄罪が成立します。
理由は、第三者に対する賄賂の供与が構成要件要素ではあっても、第三者を特定していることは、第三者供賄罪の本質ではないためです。
これは、「供与の要求」の場合も同じであると考えられています。
5⃣ このほか、「約束」の意義は、収賄罪の基本類型である単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(21)の記事をご確認ください。