刑法(贈収賄罪)

あっせん収賄罪(1)~「あっせん収賄罪とは?」「あっせん収賄罪の主体(犯人)・賄賂の概念・行為」を説明

 これから7回にわたり、あっせん収賄罪(刑法197条の4)を説明します。

あっせん収賄罪とは?

 あっせん収賄罪は、刑法197条の4において、

  • 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、5年以下の拘禁刑に処する

と規定されます。

 あっせん収賄罪は、

  • 公務員(あっせん公務員)が、請託を受け、他の公務員(職務公務員)をしてその職務上不正な行為をさせ、又は、相当な行為をさせないようにあっせんし、又はあっせんしたことの報酬として、賄賂を収受・要求・約束する罪

です。

 あっせん収賄罪は、収賄をするあっせん公務員自体の職務に関するものではなく、その公務員が、いわば顔をきかせて他の公務員の職務に関して不正行為等をさせる点に、他の収賄罪にない特色を有します。

主体(犯人)

1⃣ あっせん収賄罪は、

  • 公務員(あっせん公務員)が、請託を受け、他の公務員(職務公務員)をしてその職務上不正な行為をさせ、又は、相当な行為をさせないようにあっせんし、又はあっせんしたことの報酬として、賄賂を収受・要求・約束する罪

であるところ、本罪の主体(犯人)は、

  • あっせん公務員
  • 職務公務員

であり、いずれも公務員でなければなりません。

 あっせん公務員の「あっせん」は、あっせん公務員が公務員の地位を利用してあっせんすることが必要です。

 公務員としての立場を全く離れた単なる私人としての立場であっせんする場合は除外されます。

 この点に関する以下の判例があります。

最高裁決定(昭和43年10月15日)

 裁判所は、

  • 刑法第197条の4の斡旋収賄罪が成立するためには、その要件として、公務員が積極的にその地位を利用して斡旋することは必要でないが、少なくとも公務員としての立場で斡旋することを必要とし、単なる私人としての行為は右の罪を構成しないものと解するのが相当である

と判示しました。

2⃣ 「公務員であった者」「公務員となろうとする者」はあっせん収賄罪の主体にはなりません。

3⃣ 「公務員」の意義については、収賄罪の基本類型である単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(10)の記事をご確認ください。

あっせん収賄罪における賄賂の概念

 一般の賄賂罪である

における賄賂の概念は、

  • 職務行為に対する対価

の意味を持ちます。

 これに対し、あっせん収賄罪の賄賂の概念は、

  • あっせん公務員が、職務公務員に職務違反行為をさせるようあっせんすることなどに対する報酬

であり、一般の賄賂罪の賄賂概念より広い意味を持ちます。

あっせん収賄罪の行為

 あっせん収賄罪の構成要件としての行為は、

  • 職務公務員に不正行為等をするようあっせんすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受・要求・約束すること

です。

 「収受」の意義は、収賄罪の基本類型である単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(17)の記事をご確認ください。

 「要求」の意義も、単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(20)の記事をご確認ください。

 「約束」の意義も、単純収賄罪と同じなので、単純収賄罪(21)の記事をご確認ください。

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