これから18回にわたり、凶器準備集合罪、凶器準備結集罪(刑法208条の2)を説明します。
凶器準備集合罪、凶器準備結集罪とは?
凶器準備集合罪、凶器準備結集罪は、刑法208条の2に規定あり、
- 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する
- 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の懲役に処する
と規定されます。
以下、凶器準備集合罪、凶器準備結集罪を「本罪」といって説明します。
刑法208条の2は、
- 他人の生命・身体又は財産に対して共同して害を加える目的で2人以上の者が集合する行為を内容とする凶器準備集合罪(刑法208条の2第1項)
と
- 凶器を準備し、又はその準備があることを知って人を集合させる行為を内容とする凶器準備結集罪(刑法208条の2第2項)
からなります。
本罪の制定の趣旨
本罪は、暴力団の犯罪対策として昭和33年の刑法部改正によって新設されました。
制定当時、暴力団相互間の勢力争いに関連して殴り込みなどのために相当数の人員が集合し著しい社会不安をもたらす事態が生じていましたが、改正前の刑法には、これを検挙し処罰するための適切な刑罰法規がありませんでした。
そこで、このような事態を規制してその後に予想される殺傷事犯等を未然に防止する目的で本罪が設けられました。
本罪の保護法益
立法の経緯・目的が、 生命.身体.財産に対する侵害を事前に防止するとともに、それらの法益に対して危害が加えられるのではないかという社会的不安を除去することにあることから明らかなように、
本罪の保護法益は、
個人の生命、身体及び財産であるとともに社会生活の平穏
です。
本罪は、個人的法益(個人の生命、身体)と公共的法益(社会生活の平穏)の両者を保護法益とします。
本罪の制定の趣旨・目的が、 生命、身体、財産に対する侵害を事前に防止するとともに、それらの法益に対して危害が加えられるのではないかという社会的不安を除去することにあることから、本罪の保護法益は上記のようになります。
本罪の保護法益について判示した以下の判例があります。
裁判所は、
- 凶器準備集合罪は、個人の生命、身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものである
と判示した上、
- 両法益を「同様に」保護法益とするものである
と判示し、両者の法益に優劣のないことも明確にしました。
本罪の性質(抽象的危険犯)
上記のように、本罪の保護法益について、「社会生活の平穏」を、個人の生命・身体・財産という保護法益に比して優劣のない、独立した法益として理解する以上、本罪は、「社会生活の平穏」が害されていれば、個人の生命・身体・財産に対する危険が特定されなくとも成立すると解することとなります。
この「社会生活の平穏」を害するとは、人の生命・身体・財産に対する暴力的加害行為が起こることに対する「社会の不安感」を意味します。
また、このような、2つの保護法益の関係で、本罪は「抽象的危険犯」である(具体的な危険がなくても、抽象的な危険があれば成立する犯罪である)と解されます。
この点、上記最高裁判決(昭和58年6月23日)は、
「凶器準備集合罪は、個人の生命・身体又は財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも同様に保護法益とするものであり、また、同罪はいわゆる抽象的危険犯であって、いわゆる迎撃形態の凶器準備集合罪が成立するためには、必ずしも相手方からの襲撃の蓋然性ないし切迫性が客観的状況として存在することは必要でなく、凶器準備集合の状況が社会生活の平穏を害しうる態様のものであれば足りるというべきである」
と判示し、本罪は抽象的危険犯であるとしています。