前回の記事の続きです。
凶器準備結集罪とは?
1⃣ 凶器準備結集罪は、刑法208条の2第2項に規定があり、
第1項 2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する
第2項 前項の場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って人を集合させた者は、3年以下の懲役に処する
と規定されます。
なお、第1項は凶器準備集合罪の規定です。
2⃣ 凶器準備結集罪は、二人以上の者が共同して他人の生命・身体・財産に害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備し、又は凶器の準備があることを知って人を集合させる行為を内容とする犯罪です。
3⃣ 凶器準備結集罪は、凶器準備集合の状態を積極的・主導的に作り出す点に凶器準備集合罪より重く朋罰せられる根拠があると解され、凶器準備集合の状態を形成するにつき主導的な役割を担うものが凶器準備結集罪に当たるというべきとされます。
4⃣ 凶器準備結集罪は、人を集合させている間、継続して成立する継続犯です。
成立要件
凶器準備結集罪(2項)も、凶器準備集合罪(1項)と同様、
二人以上の者が共同して他人の生命・身体・財産に害を加える目的で集合したこと
が成立要件として必要です。
「人を集合させた」とは?
凶器準備結集罪の行為は、
- 自ら凶器を準備した上で人を集合させる場合
- 凶器の準備があることを知って、人を集合させる場合
の2つがあります。
集合してきた者は凶器を準備し、又はその準備あることを知っている必要はありません。
1⃣ 刑法208条の2第2項の条文にある「人を集合させた」とは、
- 他人に働きかけて、二人以上の者が共同加害の目的で時及び場所を同じくすること
すなわち、
- 凶器準備集合罪における集合の状態を積極的に作り出すこと
をいいます。
凶器準備結集罪の成立を認めた典型的な例として、東京高裁判決(平成5年1月29日)があります。
この事例は、成田空港反対運動の集会に際し、あらかじめ同じ派の幹部と共謀の上、集会場所での演説によって同派の者らに機動隊襲撃の決意を維持、高揚、強化し、あるいは決意させ、準備してあった多数の凶器を配付し、これらを携帯して集結移動させたというものです。
2⃣ 凶器準備結集罪の成立を認めるに当たり、凶器準備集合体を積極的・指導的に形成すれば足りるので、必ずしも人の場所的移動を必要としません。
3⃣ 共同加害の目的が成立していない集団に働きかけ、凶器を準備するとともに共同加害の意図を徹底させ集合体を作る場合も凶器準備結集罪が成立します。
参考となる裁判例として、以下のものがあります。
刑法208条の2第2項(結集罪)にいう「人を集合せしめ」るとは必ずしも人の場所的移動を必要とするものではなく既に集合している二人以上の者に対し同条所定の加害目的を付与してその目的を共通にさせる場合をも含むものと解すべきであるとしました。
刑法208条の2第2項にいう「人を集合しめたる者」とは、既に時と所とを同じくする二人以上の者に対し、同条所定の共同加害の目的を附与し、一個の集合体を形成せしめた者も含まれると解するとしました。
4⃣ 凶器を持って集合している二人以上の者に対し、所定の加害目的を付与してその目的を共通にさせる場合をも凶器準備結集罪が成立します。
参考となる裁判例として、以下のものがあります。
東京地裁判決(昭和45年6月3日)
多数の角材をもって集合した学生に対し、「機動隊を突破」せんとするいわゆるアジ演説をした行為について、共同加害目的を付与したと認め、凶器準備結集罪の成立を認めました。
5⃣ 共同加害の目的で凶器を準備して集合している者に対し、解散させないで指揮・統率して集合を継続させる場合も凶器準備結集罪が成立し得ます。
6⃣ 凶器準備結集罪の成立を認めるに当たり、結集者自ら集合場所に赴くことを要しません(東京地裁判決 昭和46年3月29日)。