刑法(未成年者略取・誘拐罪)

未成年者略取・誘拐罪(3) ~「主体(犯人)」「客体(被害者)」「故意」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、未成年者略取罪、未成年者誘拐罪(刑法224条)を「本罪」といって説明します。

本罪の主体(犯人)

 本罪の主体(犯人)に制限はありません。

 未成年者の保護監督者も本条の主体になり得えます。

 最高裁決定(平成17年12月6日)は、親権者の1人である夫が他の親権者である妻の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った行為について、未成年者略取罪に当たるとしています。

本罪の客体(被害者)

 本罪の客体(被害者)は、

未成年者(18歳未満の者)

です(民法4条)。

 未成年者であれば、意思能力を欠く嬰児であるか、成人に近い思慮を有する者であるかを問いません。

 未成年者は、現実に他人の保護監督下にあることを要しません。

 参考となる以下の判例があります。

大審院判決(明治44年3月31日)

 他人の家に下女奉公に出ていた19歳の女性を欺罔し、飲食店に奉公させて前借金を受領したという事案です。

※ R4.4.1より前は未成年者とは20歳未満の者であった

 裁判所は、

  • 実際上、意思能力ある未成年者に対して、いやしくもこれを欺罔して他所に誘致し、自己の支配内に置く以上は、誘拐罪を構成すべく
  • 而して本件の如く営利の目的をもって誘拐したるときは、被誘拐者が未成年者たると否とを問わず、刑法第225条の罪をもって論ずべきなり

と判示しました。

本罪の故意

 本罪は故意犯です(故意についての詳しい説明は前の記事参照)。

 なので、本罪が成立するためには、略取・誘拐の故意が必要です。

 略取・誘拐された者が未成年者であることについて認識が必要とされますが、それは未必的なもの(未必の故意)で足ります。

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