刑法(背任罪)

背任罪(8)~「背任罪の共同正犯」を説明

 前回の記事の続きです。

背任罪の共犯正犯

 背任罪(刑法247条)は「他人のためにその事務を処理する者」による真正身分犯です。

 そこで、そのような身分を有しない共犯者に背任罪の共同正犯が成立するかという問題があります。

 この点、判例は、刑法65条1項の「共犯」の中に共同正犯も含まれると解しており、よって、背任罪の身分を有しない者も、身分を有する者の行為に加功したときは、共同正犯の責任を負うことになります。

 背任罪の共同正犯が成立するとした判例・裁判例として、以下のものがあります。

東京高裁判決(平成19年12月7日)

 旧日本道路公団の理事が橋梁工事の発注において、当初は一括発注が予定されていたにもかかわらず、担当者に対して二分割して発注するよう指示をし、分割して工事請負契約を締結させることにより、受注価格を増大させた事案について、旧日本道路公団の副総裁だった者に対して、背任罪の共同正犯の成立を認めました。

最高裁決定(平成15年2月18日)

 住宅金融専門会社の融資担当者の特別背任行為につき同社から融資を受けていた会社の代表者が共同正犯とされた事例です。

 裁判所は、

  • 住宅金融専門会社の役員ら融資担当者が実質的に破たん状態にある不動産会社に対して多額の運転資金を継続的に実質無担保で融資した際に、上記不動産会社の代表取締役において、融資担当者らの任務違背、上記住宅金融専門会社の財産上の損害について高度の認識を有し、融資担当者らが自己の保身等を図る目的で本件融資に応じざるを得ない状況にあることを利用しつつ、迂回融資の手順を採ることに協力するなどして、本件融資の実現に加担したなど判示の事情の下では、上記代表取締役は、融資担当者らの任務違背に当たり、支配的な影響力を行使することや、社会通念上許されないような方法を用いるなどして積極的に働き掛けることがなかったとしても、融資担当者らの特別背任行為について共同加功をしたというべきである

と判示しました。

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