前回の記事の続きです。
この記事では、公用文書毀棄罪、公電磁的記録毀棄罪(刑法258条)を「本罪」と言って説明します。
罪数の考え方
本罪の罪数の考え方について、参考となる判例・裁判例として、以下のものがあります。
交通切符1組(告知票なと4枚を一括したもので事件処理の段階に応じ警察、検察庁、裁判所において所要事項が記入されて使用されるもの)を警察の捜査段階で1組(4枚)を一括毀棄したときは(3枚目と4枚名は未使用)、1個の公用文書としてその4枚全部につき公用文書毀棄罪が成立するとしました。
裁判所は、
- 一組の交通切符を構成する4枚の文書はそれぞれ独立した効用を持ち、事件処理の各段階に応じて順次、警察、検察庁、裁判所においてそれぞれ所定事項が記入され、独立した公用文書として作成、使用されるに至るものではあるけれども、同時に、右4枚の文書は、同じ番号が付され各葉互に関連を持ち、事件処理のために一組として使用されるものであって、各葉未分離の間にうち一葉でも毀損されれば一組の交通切符全体の効用が失われるに至るものであることに照らすと、交通切符は各葉未分離の間は 一組が刑法第258条にいう公務所の用に供する一個の文書に当ると解するのが相当である
と判示しました。
封印破毀罪(刑法96条)と公用文書毀棄罪とは牽連犯にあたらないとした判例です。
収税官吏が差し押さえた上、段ボール箱に入れて封印を施した帳簿書類を本人に保管させたところ、脱税の発覚を恐れた本人が封印を破棄して帳簿を焼却した事案について、封印破棄と公用文書殿棄とが牽連犯になるものではないとしました。
大審院判決(明治45年7月26日)
公用文書毀棄罪と当該公文書の偽造と行使(公文書偽造罪:刑法155条1項、偽造公文書行使罪:刑法158条1項)の各罪との間には牽連犯は成立しないとしました。
大審院判決(明治42年7月8日)、大審院判決(明治44年2月21日)
訴状、登記書類等に貼付してある収入印紙を剥離して窃取した事案で、公用文書の毀棄は事実上窃盗に該当する印紙剥離の当然の結果ではあるが、刑法上一般的抽象的に前者は後者の当然の結果とはなしがたいから、吸収関係を認めることはできず、両者は観念的競合関係に立つものと評価されるとしました。