刑法(私用文書等毀棄罪)

私用文書等毀棄罪(1) ~「私用文書毀棄罪、私電磁的記録毀棄罪とは?」「罪名」「親告罪」を説明

 これから3回にわたり、私用文書毀棄罪、私電磁的記録毀棄罪(刑法259条)を説明します。

 この記事では、私用文書毀棄罪、私電磁的記録毀棄罪を「本罪」と言って説明します。

私用文書毀棄罪、私電磁的記録毀棄罪とは?

 私用文書毀棄罪、私電磁的記録毀棄罪は、刑法259条に規定があり、

権利又は義務に関する他人の文書又は電磁的記録を毀棄した者は、5年以下の懲役に処する

と規定されます。

 本罪は、

  • 権利・義務に関する他人所有の文書(公文書、私文書を問わない)
  • 権利・義務に関する他人所有の電磁的記録

を毀棄した者を処罰するものです。

 本罪は、文書又は電磁的記録の持つ物的な価値、効用の保護を目的としています。

罪名

 「権利・義務に関する他人所有の文書(公文書、私文書を問わない)」を毀棄した場合の罪名は、「私用文書毀棄罪」となります。

 本罪の文書は、「権利・義務に関する他人所有の文書」であれば、公文書、私文書を問わないので、「私文書毀棄罪」とは呼ばずに、「私用文書毀棄罪」と呼ぶものです。

 「権利・義務に関する他人所有の電磁的記録」を毀棄した場合の罪名は、「私電磁的記録毀棄罪」となります。

本罪の保護対象となる文書・電磁的記録

 本罪の保護の対象は、権利・義務に関する文書・電磁的記録に限定されます。

 その余の文書・電磁的記録は、器物損壊罪刑法261条)の対象となります。

親告罪

 本罪は親告罪です(刑法264条)。

 したがって、本罪は、告訴権者からの告訴がなければ、検察官は事件を起訴することができません。

 原則として、文書又は電磁的記録の所有者が告訴権者です。

 ただし、自己の物に対して本罪の適用が認められる場合(刑法262条)には、差押権者、物権取得者、賃借人等の権利者が告訴権者となります(東京高裁判決 昭和29年12月13日、仙台高裁判決 昭和39年3月19日)。

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