これから25回にわたり、道路交通法64条の
- 道路交通法違反(無免許運転)(道交法64条1項)
- 道路交通法違反(無免許運転者への車両提供)(道交法64条2項)
- 道路交通法違反(無免許運転車両同乗)(道交法64条3項)
を説明します。
道路交通法違反(無免許運転、道交法64条1項)とは?
道路交通法違反(無免許運転)は、道交法64条1項において、
- 何人も、第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない
と規定されます。
罰則は、道交法117条の2の2第1号に規定があり、
- 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
となっています。
道交法64条1項は、公安委員会の運転免許を受けないで
又は
- 一般原動機付自転車
を運転することを禁止したものです。
特定小型原動機付自転車は無免許運転の対象外
特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)は、その運転に運転免許証は不要であるため、道交法64条1項の処罰の対象外となっています。
※ 「一般原動機付自転車」「特定小型原動機付自転車」の説明は、道路交通法の車両(2)の記事参照
無免許運転は道路上で行われる必要がある
道路交通法は、道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図ることを目的としており、その適用範囲は「道路」(道交法2条1項1号)に限られます。
例えば、自宅敷地内で道路交通法違反に触れる行為をしても、自宅敷地内は道路ではないので、道路交通法違反は成立しません。
道交法64条において「道路において」という文言は用いられていませんが、「運転」の意義が「道路において、車両又は路面電車をその本来の用い方に従って用いることをいう」(道交法2条1項17号)と定められていることから、道交法64条の禁止規定が働くのは、道交法に定める道路上に限られます。
「何人も」とは?
道交法64条1項における「何人(なんぴと)も」とは、「だれでも」という意味です。
「何人も」とは、法令上は、国籍、性別、年齢を問わず、日本国の統治権の対象となる全ての者をあらわす場合に用いられる用語です。
「第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(…)」とは?
自動車又は一般原動機付自転車を運転しようとする者は、道交法84条1項の規定により公安委員会の運転免許を受けなければならないことになっています。
「第84条第1項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(…)」とは、「公安委員会の運転免許を受けないで」という意味です。
本条カッコ書き(…)部分の
(第90条第5項、第103条第1項若しくは第4項、第103条の2第1項、第104条の2の3第1項若しくは第3項又は同条第5項において準用する第103条第4項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)
は、
免許の効力が停止されている者を運転免許を受けていない者の中に含める旨定めているもの
です。
したがって、運転免許停止中に運転すれば、無免許運転となります。
なお、道交法90条1項の規定による免許の保留処分は、もともと免許証を交付することを保留するものであるので、公安委員会の運転免許を受けていない者に当たります。
「自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない」とは?
「自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない」とは、
運転免許を受けないで自動車又は一般原動機付自転車の運転をすることを禁止する
という意味です。
路面電車とトロリーバスを無免許運転した場合の罰則
路面電車とトロリーバスについては、軌道法14条の規定に基づき制定された動力車操縦者運転免許に関する省令3条に、運転免許を受けたのちでなければ操縦してはならない旨が定められています。
しかし、軌道法には罰則が設けられていないため、道交法117条の2の2第1号に
「法令の規定による運転の免許を受けている者(…)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで…運転した者」
と規定し、道交法の罰則によって操縦を禁止しています。
道交法117条の2の2第1号に「運転し、又は操縦する」と規定しているのは、
- 道交法において、自動車又は一般原動機付自転車を「運転」
といい、
- 軌道法及び動力車操縦者運転免許に関する省令において、路面電車及びトロリーバスを「操縦」
といって、その用語を使い分けていることによるものと考えられています。
国際運転免許証と無免許運転
道交法117条の2の2第1号は、道交法107条の2の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者については、「法令の規定による運転の免許を受けている者」に含む旨規定し、国際運転免許証等を所持しないで運転したものを無免許運転とする旨明らかにしています。