前回の記事の続きです。
正当行為と道路交通法違反(無免許運転)
無免許運転をしても、それが正当行為(刑法35条)であると認められる場合は、無免許運転は違法性が阻却され、道路交通法違反(無免許運転)は成立しません。
この点に関し、法例に定められた運転の資格を持たない消防団員が消火のため消防用自動車を運転出勤した行為が刑法35条の正当行為によってした行為に該当するかが争われ、正当行為には該当しないとした裁判例があります。
東京高裁判決(昭和27年7月1日)
裁判所は、
- 消防が火災を予防し、警戒し及び鎮圧し、国民の生命、身体及び財産を火災から保護するとともに、火災又は地震等の災害による被害を軽滅し、もって安寧秩序を保持し、杜会公共の福祉の増進に資することを目的とするものであること及び市町村の消防団員が上司の指揮監督に服すべきことは消防法又は消防組織法の規定に徴して明らかであるが、経験の有無にかかわらす、法令に定められた運転の資格を持たないで消防用四輪自動車を運転することは道路交通取締法第7条第1項第11項第2号(※旧法)の禁するところであり、消防法等によってもそのような応急措置は許されていないのであるから、被告人の上司である居村消防団の副団長が被告人に対し、原判示自動車を甲所から居村まで運転して来るように命じたことは、たとえ、副団長が黒煙の立ち昇るのを見て火災が発生したものと判断し、かつ正規の運転手が不在のため、軍隊当時運転の経 験を持っていた被告人に右の運転を命じたのであったとしても、違法の措置というのほかはなく、そのような違法の上司の命令に対しては、部下である被告人として、これに服従しなければならないわけではないのであって、被告人がこれに服従したことは法令又は正当の業務によってなした行為には当らない
と判示し、無免許運転は正当行為として違法性は阻却されないとし、道路交通法違反(無免許運転)が成立するとしました。