道路交通法違反

無免許運転(18)~「幇助犯と道路交通法違反(無免許運転)」を説明

 前回の記事の続きです。

幇助犯と道路交通法違反(無免許運転)

 幇助犯(刑法62条1項)は、

正犯(犯罪の実行者)の犯行を手助けした場合(正犯の実行行為を容易にさせた場合)

に成立します。

※ 幇助犯の詳しい説明は前の記事参照

 幇助犯が成立するためには、

  • 幇助の意思をもって、人を幇助すること
  • 幇助された者が犯罪を実行すること

の2点が必要になります。

 道路交通法違反(無免許運転)の幇助犯の態様としては、

  • 指導幇助
  • 貸与幇助

の2つがあります。

指導幇助とは?

 指導幇助とは、

無免許運転者に対し運転の方法、技術等を指導又は助言して運転させた場合

をいいます。

 その指導幇助者が同乗していると否とを問いません。

 付近の路上で指導助言している場合にも適用されます。

 また、必ずしもその幇助者が運転有資格者である必要はありません。

 しかし、単なる同乗者は幇助者とはなりません。

貸与幇助とは?

 貸与幇助とは、

無免許運転者に自動車を貸与し、又は運転席を譲って運転させた場合

をいいます。

 自動車に同乗していることを要しません。

裁判例

 道路交通法幇助(無免許運転)に関する以下の裁判例があります。

富良野簡裁判決(昭和34年7月1日)

 裁判所は、

  • 無免許運転幇助犯が成立するためには、被告人において、自動車を運転するものが自動車の運転免許を受けていないのに自動車を運転することを認識し、かつ、これを認容した上、幇助を与えることを必要とするものであって、過失による幇助は成立しないと解する

と判示しました。

広島高裁判決(昭和41年4月14日)

 裁判所は、

  • 雇主が無免許運転の犯意を有する従業員Aに対し、自動車を配車することは同人が無免許運転の犯意に基づき具体的な実行行為にでることにあずかって力があり、また、自己名義の免許証をAに貸与することは、Aとしては万一交通取締りの際、検問を受けた場合においても、違法な免許に基づく運転たる外観を装い、無免許運転摘発の危険から免れる可能性を与えられ同人をして安んじて無免許運転にたずさわることを得しめる結果に導き、これはもとより無免許運転たる犯行を容易ならしめる行為であって、無免許運転の幇助犯にあたると解する

と判示しました。

墨田簡裁判決(昭和43年6月4日) 同趣旨:福岡高裁判決(昭和33年12月10日)

 裁判所は、

  • 運転免許を有していない者が運転席でハンドル操作をし、運転免許を受けている者がその情を知りながら、助手席でアクセル、クラッチ、ブレーキ等の操作をして自動車を運行させた場合は、運転免許を有しない者は、無免許運転の罪の正犯、運転免許を受けている者は、無免許運転幇助の罪の責任がある

と判示しました。

名古屋高裁判決(昭和43年10月22日)

 裁判所は、

  • 自動車の運転者が無免許の助手に運転させて仮眠中、右助手が過失により人身事故を起した場合は、無免許運転の幇助のほかに業務上過失傷害罪が成立する

と判示しました。

大阪地裁判決(昭和56年6月4日)

 不正に国際運転免許証を入手したAが、運転免許証を有しないB、Cらが自動車を運転する希望を有することを知り、昭和55年6月に、右免許証を同人らに供与し、Bは同年12月8日、Cは同年10月18日及び同年11月10日それぞれ普通自動車を運転した事案で、Aに対する無免運転幇助の成否が問題となった事例です。

 裁判所は、

  • 弁護人は、前記B及びCの運転行為は同人らの意思のみに基づいてなされたものであり、Aの行為とは無関係であるから幇助罪は成立しない旨主張するが、幇助罪が成立するためには、幇助者において正犯の犯罪行為を認識しこれを認容してそれを助けその実現を容易ならしめることが必要であるが、正犯の行為の日時、場所等具体的事実のすべてについてこれを認識することまで必要ではなく、無免許の者に対し、不正に入手した国際運転免許証を供与する行為は被帯助者の無免許運転行為を容易にさせる行為であり、かつ被告人において、前記B及びCが無免許運転をすることを認識、認容していたことは前掲各証拠により認められるので、無免許運転の幇助罪が成立することは明らかである

と判示しました。

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