道路交通法違反

無免許運転(23)~「道路交通法違反(無免許運転)と他罪との関係」を説明

 前回の記事の続きです。

道路交通法違反(無免許運転)と他罪との関係

 道路交通法違反(無免許運転)と他罪との関係に関する判例・裁判例として、以下のものがあります。

道路交通法違反(無免許運転)と道路運送車両法違(車検切れ)

最高裁判決(昭和49年5月29日) (事件番号 昭和47(あ)725)

 道路交通法違反(無免許運転)と道路運送車両法違(車検切れ)とが、同一の日時場所において行われた場合について、両罪は観念的競合になるとしました。

 裁判所は、

  • 被告人が本件自動車を運転するに際し、無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した後であったことは、車両運転者又は車両の属性にすぎないから、被告人がこのように無免許で、かつ、自動車検査証の有効期間が満了した自動車を運転したことは、右の自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに一個の車両運転行為であつて、それが道路交通法118条1項1号、64条及び昭和44年法律第68号による改正前の道路運送車両法108条1号、58条の各罪に同時に該当するものであるから、右両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当である

と判示しました。

道路交通法違反(無免許運転)と道路交通法違反(酒酔い運転)

最高裁判決(昭和49年5月29日) (事件番号 昭和46(あ)1590)

 道路交通法違反(無免許)と道路交通法違反(酒酔い運転)とが、同一の日時場所において行われた場合について、両罪は観念的競合になるとしました。

 裁判所は、

  • 被告人が本件自動車を運転するに際し、無免許で、かつ、酒に酔った状態であったことは、いずれも車両運転者の属性にすぎないから、被告人がこのような無免許で、かつ、酒に酔った状態で自動車を運転したことは、右の自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに一個の車両運転行為であって、それが道路交通法第118条1項1号、第64条及び同法第117条の2第1号、第65条1項の右罪に同時に該当するものであるから、右両罪は刑法第54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当である

と判示しました。

道路交通法違反(無免許運転)と道路交通法違反(積載制限超過)

東京高裁判決(昭和49年12月12日)

 裁判所は、

  • 無免許運転の罪と積載制限違反の罪とは、観念的競合である

としました。

道路交通法違反(無免許運転)と道路交通法違反(一時不停止)

東京高裁判決(昭和49年12月17日)

 裁判所は、

  • 無免許運転の罪と一時停止違反の罪とは、併合罪である

としました。

道路交通法違反(無免許・酒気帯び運転)と道路交通法違反(信号無視)

最高裁決定(昭和49年11月28日)

 裁判所は、

  • 無免許運転の所為と酒気帯び運転の所為は観念的競合の関係にある
  • 無免許運転及び酒気帯び運転の所為とその運転中犯した信号無視の所為は併合罪の関係にある

としました。

道路交通法違反(無免許運転)と道路交通法違反(過労運転)と過失運転致傷

高松高裁判決(昭和49年11月28日)

 裁判所は、

  • 無免許運転及び過労運転の罪並びに業務上過失傷害罪(現行法:過失運転致傷)の各罪の関係は、無免許運転と過労運転の罪は、観念的競合の関係にあり、これらの罪と業務上過失傷害罪とは、併合罪の関係にある

としました。

道路交通法違反(無免許運転)と道路交通法違反(速度超過)

最高裁決定(昭和50年5月23日)

 裁判所は、

  • 無免許で自動車を運転中、速度違反の所為をした場合において、速度違反の所為は無免許運転の継続中における一時的局所的な行為にすぎず、自然的観察のもとにおいて、社会的見解上別個のものと評価すべきであって、これを一個のものとみることはできないので、右両罪は併合罪となる

と判示しました。

道路交通法違反(無免許・酒気帯び運転)と道路交通法違反(はみ出し禁止・信号無視)

東京高裁判決(昭和55年1月31日)

 裁判所は、

  • 無免許で酒気を帯びて自動車を運転する行為は、その形態が通常時間的継続と場所的移動とを伴うものであるのに対し、その過程において、前車を追い越すにあたり、道路の右側部分にはみ出して通行する行為や、信号機の表示する赤色の灯火信号に従わないで通行する行為は、運転継続中における一時点一場所における事象であって、両者は社会的見解上別個のものと評価すべきものであるから、刑法第54条1項前段にいう一個の行為には当たらない
  • したがって無免許・酒気帯び運転の罪とはみ出し禁止違反の罪及び信号無視の罪とは併合罪である

と判示しました。

道路交通法違反(無免許)と犯人隠避罪

最高裁決定(昭和35年7月18日)

 裁判所は、

  • 裁無免許で重過失致死傷罪を犯したものが、運転免許を有する他人を教唆して、自己の身代わりとして刑罰を受けさせたときは、犯人隠避罪教唆犯が成立する

と判示しました。

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