前回の記事の続きです。
本罪の行為である「奪取」とは?
被拘禁者奪取罪は、刑法99条において、
法令により拘禁された者を奪取した者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する
と規定されます。
本罪の行為は、
法令により拘禁された者を「奪取」すること
です。
奪取の意義
被拘禁者奪取罪の「奪取」の意義については、
- 看守者の実力支配の下にある被拘禁者をその実力支配より離脱させることをいうとする見解
- 被拘禁者をその看守者の実力支配から離脱させて自己又は第三者の実力支配下に置くことをいうとする見解
に分かれているが、②の見解が通説です。
①説の見解
①の見解は、理由として、
- その理由として、自己の支配に移すことを必要とすると解放したときは含まれなくなり妥当でないこと
- 逃走援助と奪取とは類型を異にすること
が挙げられています。
①の見解に基づくと、被拘禁者を自己又は第三者の支配下に移すことを要せず、被拘禁者を拘禁から離脱させれば被拘禁者奪取罪が成立することになります。
②説の見解
②説の見解は、被拘禁者奪取罪が特に「奪取」という用語を用いており、その刑罰が比較的重いことを理由としています。
②説の見解に基づくと、被拘禁者を看守者の実力的支配から脱せしめて逃走させただけでは、被拘禁者奪取罪は成立しないことになります。
この場合は、逃走援助罪(刑法100条)又は単純逃走罪(刑法97条)の幇助が成立するとされます。
「奪取」の手段
被拘禁者奪取罪の「奪取」の手段については限定はなく、手段のいかんを問いません。
「奪取」の手段には、
- 暴行・脅迫
- 偽計
- 単に看守者の目を盗む場合
などを含みます。
「奪取」を認定する当たり、被拘禁者の意思のいかんは問わない
被拘禁者奪取罪の「奪取」を認定するに当たり、被拘禁者の意思がどのようなものであるかを問いません(通説)。
したがって、被拘禁者自身が逃走の意思を有していた場合であっても、これを奪取したときは、逃走援助罪(刑法100条)ではなく、被拘禁者奪取罪が成立します。