刑法(総論)

【犯罪の罪数②】包括一罪とは? ~「包括一罪の種類(結合犯、集合犯、接続犯)」を判例など解説~

包括一罪とは?

 包括一罪とは、

実行した複数の犯罪行為が、複数ではなく、1個の犯罪行為に該当する場合

をいいます。

包括一罪の種類

 包括一罪は、

  • 結合犯
  • 集合犯
  • 接続犯

に分けることができます。

結合犯

 結合犯の例は、強盗殺人罪です。

 強盗殺人は、強盗罪と殺人罪が結合して、1つの犯罪を構成しているので、結合犯となります。

 このように、結合犯とは、

数個の異なる種類の犯罪が結合して、1個の犯罪を構成する犯罪

をいいます。

集合犯

 集合犯の例は、常習累犯窃盗罪です。

 窃盗を常習的に繰り返し行った場合に成立する犯罪です。

 たとえば、3回万引き(窃盗)をしたことで逮捕されたとします。

 常習累犯窃盗が成立すると、

窃盗罪+窃盗罪+窃盗罪=常習累犯窃盗罪

というイメージで、3個の窃盗罪が1個の常習累犯窃盗罪を構成します。

 このように、集合犯とは、

同じ種類の数個の犯罪が集まって、1個の犯罪となる犯罪

をいいます。

接続犯

 たとえば、夜の2時間のうちに、3回にわけて、倉庫から米俵を盗んだ場合、3個の窃盗罪ではなく、1個の窃盗罪が成立します(最高裁判所 判例 昭和24年7月23日)。

 このように、接続犯とは、

 事実上は数個の独立した犯罪を構成する行為であっても、単一の犯意に基づき、時間的・場所的に近接した条件の下で、1個の犯罪の完成を目指して行われており、犯行が分離できないような密接な関連にある犯罪

をいいます。

 先ほどの米俵の窃盗の判例において、裁判官は、

  • 3回にわたる米俵の窃盗行為は、わずか2時間余の短時間のうちに、同一場所でなされたもので、同一機会を利用したものである
  • いずれも米俵の窃取という全く同種の動作であるから、単一の犯意の発現たる一連の動作であると認めるのが相当である
  • 別個独立の犯意に出でたものであると認める別段の事由を発見することはできない
  • そうであるなら、本件行為を一罪と認定するのが相当であって、独立した3個の犯罪と認定すべきではない

と判示しました。

 この判例により、どのような場合に接続犯となり、数個の犯罪行為が1つの犯罪として成立する場合の基準が示されました。

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