刑法(脅迫罪)

脅迫罪(24) ~「害悪告知の名義人は、脅迫者以外でも、名義を欠いても、実在しない人物でもよい」「脅迫者が誰であるかを被害者が認識しなくも、脅迫罪は成立する」を判例で解説~

害悪告知の名義人は、脅迫者以外でも、名義を欠いても、実在しない人物でもよい

 脅迫罪(刑法222条)において、害悪の告知を文書によって行う場合に、その名義は、脅迫者名義であればよいのはもちろん、

  • 脅迫者以外の者が名義人となっている場合
  • 名義人の記載を欠く場合
  • 虚無人名義(実在しない人物名義)を用いる場合

でもよく、そのような場合でも脅迫罪が成立します。

 参考となる判例として、次のものがあります。

大審院判決(明治43年11月15日)

 虚無人名義の文書で放火又は殺害をする旨告知した事案で、裁判官は、

  • たとえ無人の名義を用いて通告したるも、これがため脅迫罪の成立を妨げることなし

と判示しました。

脅迫者が誰であるかを被害者が認識しなくも、脅迫罪は成立する

 脅迫者(害悪の通告者)が誰であるかを被害者が認識しなくても、脅迫罪は成立します。

 参考となる判例として、次のものがあります。

大審院判決(大正7年3月11日)

 犯人が脅迫の手段として放火の偽装をし、被害者にほどなくこれを自覚させたが、誰がどれをしたのか分からなかったという事案で、裁判官は、

  • 通告者の何人なるやを被通告者において覚知することは、犯罪の成立に消長なきものとす

と判示しました。

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