刑法(侮辱罪)

侮辱罪(1) ~「侮辱罪とは?」「名誉毀損罪との違い」「侮辱罪の客体(被害者)の範囲」を説明~

 これから2回にわたり、侮辱罪(刑法231条)を説明します。

侮辱罪とは?

 侮辱罪(刑法231条)は、

具体的に事実を摘示することなく、公然と人に対して軽蔑の表示をする行為を処罰するもの

です。

 侮辱罪の保護法益の保護法益について、判例・通説では、名誉毀損罪(刑法230条)と同じ名誉であると解されています。

 名誉毀損罪は親告罪刑法232条)なので、告訴がなければ公訴を提起できません(詳しくは別の記事で説明)。

名誉毀損罪との違い

 侮辱罪と名誉毀損罪は、名誉を害する具体的事実を摘示するか否かという行為態様において相違するにすぎないと見ることができます。

 名誉毀損罪は、名誉を害する具体的事実を摘示する行為であるのに対し、侮辱罪は、具体的に事実を摘示することなく、公然と人に対して軽蔑の表示をする行為である点に違いがあります。

侮辱罪の客体(被害者)の範囲

 侮辱罪は、名誉の主体たり得る者は、すべて侮辱罪の被害者になり得ます。

 具体的には、行為者(犯人)以外の

が侮辱罪の被害者になり得ます。

※ この点は名誉毀損罪と同じであるので、詳しくは名誉毀損罪の記事参照

 法人に対する侮辱罪の成立が認められた例として以下の判例があります。

最高裁決定(昭和58年11月1日)

 裁判官は、

  • 刑法231条にいう「人」には法人も含まれると解すべきであり、原判決是認する第一審判決が本件B株式会社を被害者とする侮辱罪の成立を認めたのは、相当である

と判示ました。

死者に対して侮辱罪は成立しない

 死者に対して侮辱罪は成立しません。

 法文上の「人」には、通常、死者は含まれません。

 名誉毀損罪においては、死者に対する名誉毀損罪が成立しますが、これは刑法230条2項に特別の規定があるためです。

次の記事へ

名誉毀損罪、侮辱罪の記事まとめ一覧