これから18回にわたり、器物損壊罪(刑法261条)を説明します。
器物損壊罪とは?
器物損壊罪は、刑法261条に規定があり、
前3条(刑法258条、刑法259条、刑法260条)に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する
と規定します。
器物損壊罪(刑法261条)は、前3条に規定されている
以外の他人の物の損壊・傷害について規定したものであり、前3条の補充規定です。
器物損壊罪は、
と法条競合(補充関係)の関係あるため、上記①~③の罪が成立するときは、器物損壊罪は成立しません。
目的
器物損壊罪は、
他人の所有する物の持つ物的な価値、効用の保護
を目的としています。
暴力行為等処罰に関する法律で器物損壊罪の刑を加重している
器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。
暴力行為等処罰に関する法律は、器物損壊罪(刑法261条)を数人共同して犯した場合について3年以下の懲役又は30万円以下の罰金とし(同法律1条)、常習として犯した場合について3月以上5 年以下の懲役として(同法律1条の3)、いずれも刑を加重しています。
親告罪
しかし、上記暴力行為等処罰に関する法律1条の罪、 1条の3の罪は非親告罪です。
※ 親告罪とは、告訴をしなければ、犯人を裁判にかけることができない犯罪をいいます(詳しくは前の記事参照)。
損壊・毀棄行為に関する特別刑法との関係
特別刑法により損壊・毀棄行為の処罰が規定されている特定の物があります。
例えば、
- ガス工作物(ガス事業法192条)
- 自衛隊の所有・使用する武器等(自衛法121条)
- 新幹線鉄道の用に供する自動列車制御設備等(新幹線特別法2条)
- 鉄道地内の標識掲示(鉄道営業法36条)
- 投票箱等(公職選挙法229条)
- 火災報知器等(消防法39条)
- 水防の用に供する器具等(水防法52条)
- 重要文化財(文化財保護法195条)
- 郵便事業株式会社の取扱中に係る郵便物(郵便法77条)
- 航行中の航空機(航空危険法2条)
- 愛護動物(動物の愛護及び管理に関する法律44条1項)
があります。
これら特別刑法の罪が成立する揚合には、一般法(刑法)である器物損壊罪(刑法261条)の罪は成立しません。
参考となる以下の裁判例があります。
火災報知機を損壊したものとして、一般法である刑法の規定に優先して、特別法である消防法39条の規定の適用があるとしました。