前回の記事の続きです。
他罪との関係
信用毀損罪(刑法233条前段)と
との関係を説明します。
① 業務妨害罪との関係
同一の行為が人の信用を毀損すると同時にその人の業務を妨害する場合、判例は、信用棄損罪と業務妨害罪(刑法233条後段、234条)は単純一罪になるとしています。
大審院判決(昭和3年7月14日)
駅弁業者と紛争中の者が、その業者の駅弁が不潔・非衛生である旨の不実の内容を記載した葉書一枚を鉄道局事務所旅客課長宛に郵送して同課長に到達せるという偽計を用いて、同課長に駅弁業者の営業に疑念を抱かせ、駅弁業者の信用を毀損し、かつ、駅弁業者の業務を妨害したとして、信用毀損罪とともに偽計業務妨害罪が成立するとしました。
② 名誉毀損罪との関係
信用毀損罪と名誉毀損罪は構成要件が相違しており、例えば、真実を流布して名誉を毀損する場合は、「虚偽」の要件が欠けるため信用毀損罪は成立する余地がなく、名誉毀損罪のみが成立します。
なお、「信用」と「名誉」は異なる存在であることを示した以下の判例があります。
大審院判決(大正5年6月26日)
裁判所は、
- 信用毀損罪における信用は、性質上これを財産的法益の一種と認むるを至当とすべく、名誉の一部に属するものにあらずして、その範囲外において独立の存在を有するものとす
と判示しました。