刑法(逮捕・監禁罪)

逮捕・監禁罪(18) ~「不作為犯・間接正犯による逮捕・監禁罪」を説明~

 前回の記事の続きです。

不作為犯・間接正犯による逮捕・監禁罪

 逮捕罪、監禁罪は、

不作為

によって犯すことも、

情を知らない第三者を利用して犯すこと(間接正犯)

も可能です。

不作為による監禁罪の例

 不作為(行動しないこと)によって行われる犯罪を不作為犯といいます(詳しくは前の記事参照)。

 不作為による監禁の事例として、学説では、

  • 自己の過失によって他人を倉庫内に閉じ込めた者が、その事実を知った後、これを解放しない場合
  • 自由刑の刑期を満了したものを、所定の時期までに釈放しない場合

を挙げるものがあります。

間接正犯による監禁罪の例

 間接正犯とは、

他人を道具として利用し、他人に犯罪行為をやらせ、犯罪を実現すること

をいいます(詳しくは前の記事参照)。

 間接正犯による監禁罪の事例として、以下の判例があります。

大審院判決(昭和14年11月4日)

 情を知らない警察官を利用して被害者を留置させた間接正犯の事案です。

 裁判所は、

  • 不法監禁罪は、犯人自ら監禁行為をせず、情を知らない第三者を利用しその者をして監禁行為をさせるという方法で実現することもできるものであり、本件では、被告人は、満州国熱河省赤峰警察署に警尉として勤務中、職務執行を装って、北京外二区警察署員に対し、アヘンの密輸出の取調べであると偽って、Tを同署留置場に留置方の依頼をし、よって、情を知らない同署員をしてTを同署留置場に拘禁せしめたものであるから、被告人の所為は不法監禁罪に該当する

と判示しました。

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