前回の記事の続きです。
逮捕罪、監禁罪の実行の着手時期と終了時期
犯罪の成立過程(時系列)
犯罪の成立過程(時系列)は、
決意→実行の着手→実行の終了→結果の発生
の4段階になります。
「実行の着手」または「実行の終了」に至ったが、何らかの事情によって結果が発生しなかった場合を『未遂』といいます。
逮捕罪、監禁罪の実行の着手時期
犯罪の実行の着手時期は、
犯罪構成要件に該当する行為及びそれに密接する行為を開始したとき
です。
逮捕罪、監禁罪(刑法220条)においては、
- 人の行動の自由を拘束する行為に着手すれば
(例えば、人を逮捕監禁しようとしてその手段たる暴行、脅迫を開始すれば)
逮捕罪、監禁罪の実行の着手があったといえます。
偽計を手段とする監禁の場合は、
- 人をだまして部屋に誘い込む行為を開始すれば
あるいは、
- 車に乗せる行為を開始すれば
逮捕罪、監禁罪の実行の着手があったといえます。
なお、逮捕罪、監禁罪については、未遂犯処罰の規定が存在しません。
なので、犯罪が既遂に至らない限り、手段たる暴行、脅迫等がそれ自体として処罰されるのは格別とし、逮捕罪、監禁罪としては処罰の対象にはなりません。
逮捕罪、監禁罪の成立時期(既遂時期)
逮捕罪、監禁罪の成立時期(既遂時期)は、
被害者の身体拘束からの脱却又は行動の自由の拘束からの脱出が著しく困難な状態になったとき
です。
上記脱出が不可能になるまでの必要はありません。
偽計を手段とする監禁の場合に被害者がだまされていることに気付いていない場合の監禁罪の成立時期
偽計を手段とする監禁の場合に、被害者がだまされていることに気付いていない間があった場合について、監禁罪の成立時期がどの時点になるかが問題になります。
この点、最高裁決定(昭和33年3月19日)は、
被害者がだまされてタクシーに乗せられていると気付く以前の、被告人が被害者をだましてタクシーに乗せたときからの行為
について監禁罪の成立を認めており、判例はこの立場をとっています。
逮捕罪、監禁罪の終了時期
逮捕罪、監禁罪は継続犯です。
被害者の自由の拘束が継続する間、逮捕罪、監禁罪に該当する行為は継続していると解されます。
したがって、逮捕罪、監禁罪の終了の時期は、
被害者の自由の拘束が解けたとき
となります。