前回の記事の続きです。
① 人質による強要行為等の処罰に関する法律違反との関係
人質による強要行為等の処罰に関する法律1条・2条は、逮捕罪・監禁罪の特別規定と解されています。
なので、同法律1条・2条の前提になる人質を確保する行為としての逮捕・監禁は、当然に同法律1条、2条の罪に吸収され、逮捕罪・監禁罪は成立しません。
なお、同法律には、行為者が故意なくして人質を死傷に致らしめた場合の致死傷罪の規定がありません。
したがって、人質に対する逮捕・監禁行為から死傷の結果が発生した場合には、同法律1条・2条の罪と逮捕監禁致死傷罪(刑法221条)とが成立し、両者の関係は観念的競合となります。
② 航空機の強取等の処罰に関する法律違反との関係
航空機の強取等の処罰に関する法律1条の行為も、その性質上、逮捕・監禁行為を通常随伴するものなので、同条の罪が成立するときは、逮捕監禁罪は、同条の罪に吸収され成立しません。
③ 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律違反との関係
海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律2条1号の行為は、上記の航空機の強取等の処罰に関する法律1条と同様の規定であり、上記同様、その性質上、逮捕・監禁行為を通常随伴するものなので、海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律2条1号の海賊行為の罪が成立するときは、逮捕監禁罪は、同号の罪に吸収され成立しません。
④ 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反罪との関係
組織的な犯罪として逮捕監禁が行われたときは、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律3条1項8号の罪が成立します。
同号の罪は、逮捕罪・監禁罪の特別罪として、逮捕罪・監禁罪の刑を加重したものです。
逮捕罪・監禁罪(刑法220条)の刑の重さは、「3月以上7年以下の懲役」ですが、同号の罪の刑の重さは、「3月以上10年以下の懲役」と重く定められています。