刑法(逮捕監禁致死傷罪)

逮捕監禁致死傷罪(1) ~「逮捕監禁致死傷罪とは?」「罪名」「法定刑」を説明~

 これから6回にわたり、逮捕監禁致死傷罪(刑法221条)を説明ます。

逮捕監禁致死傷罪とは?

 逮捕監禁致死傷罪は、刑法221条に規定があり、

前条(※刑法220条の逮捕監禁罪の条文)の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する

と規定します。

 本罪は、逮捕監禁罪の結果的加重犯を規定します。

 本罪が成立するときは、別に傷害罪(刑法204条)、傷害致死罪(刑法205条)は成立しません。

罪名

 逮捕により人に傷害を負わせた場合は、「逮捕致傷罪」となります。

 監禁により人に傷害を負わせた場合は、「監禁致傷罪」となります。

 逮捕に引き続いて監禁をし、人に傷害を負わせた場合は、「逮捕監禁致傷罪」となります。

 逮捕により人を死亡させた場合は、「逮捕致死罪」となります。

 監禁により人を死亡させた場合は、「監禁致死罪」となります。

 逮捕に引き続いて監禁をし、人を死亡させた場合は、「逮捕監禁致死罪」が成立します。

 逮捕に引き続いて複数の人を監禁をし、ある人には傷害を負わせ、ある人は死亡させた場合は、「逮捕監禁致死傷罪」が成立します。

法定刑

 「逮捕致傷罪」「監禁致傷罪」「逮捕監禁致傷罪」の法定刑は、

3月以上15年以下の懲役

となります。

 「逮捕致死罪」「監禁致死罪」「逮捕監禁致死罪」「逮捕監禁致死傷罪」の法定刑は、

3年以上20年以下の懲役

となります。

 法定刑が上記のようになる理由を説明します。

 逮捕監禁致死傷罪は、刑法221条の傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます。

 傷害の罪と比較して、重い刑により処断するとは、

  • 「致傷」の場合には刑法204条(傷害罪:15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の法定と比較し、
  • 「致死」の場合には刑法205条(傷害致死罪:3年以上の有期懲役)の法定刑と比較し、

上限・下限ともに重い刑をもってその法定刑とするという趣旨です(大審院判決 大正8年3月8日)。

「致傷」の法定刑の考え方

 「致傷」の場合には、上限は刑法204条の刑(傷害罪:15年以下の懲役)により、下限は刑法220条の刑(逮捕監禁罪:3月以上の懲役)によることになるため、法定刑は、

3月以上15年以下の懲役

となります。

 なので、「致傷」については、3月未満の懲役刑と罰金刑は科すことができません(罰金刑は懲役刑のより軽い刑なので、刑法204条の上限から除外されます)。

「致死」の場合の考え方

 「致死」の場合には、上限・下限ともに刑法205条(傷害致死罪:3年以上の有期懲役)2の刑となります。

 刑法205条(傷害致死罪)の「3年以上の有期懲役」について、有期懲役の上限は、刑法12条1項により、「20年以下」と定められています。

  よって、法定刑は、

3年以上20年以下の懲役

となります。

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