刑法(保護責任者遺棄罪)

保護責任者遺棄罪(10) ~「主体(犯人)は、保護責任者に限られる」「保護責任者の定義・根拠」などを説明~

 前回の記事の続きです。

主体(犯人)は、保護責任者に限られる

 保護責任者遺棄罪(刑法218条)の主体(犯人)となりうるのは、

要扶助者を保護すべき責任ある者(保護責任者)

に限定されます。

保護責任者の定義

 保護責任者とは

要扶助者の生命・身体の安全を保護すべき法律上の義務を負う者

をいいます。

保護責任の根拠

 保護責任の根拠は、判例で、

法令、契約、事務管理によると、慣習条理によるとを問わない

とされています(大審院判決 大正8年8月30日、大審院判決 大正15年9月28日)。

保護責任者の位置づけ

 保護責任者という身分は、遺棄罪(刑法217条)と対比すると刑の加重要素です。

 遺棄罪(刑法217条)の法定刑は、「1年以下の懲役」であるのに対し、保護責任者遺棄罪の法定刑は「3月以上5年以下の懲役」となっており、保護責任者遺棄罪の法定刑は遺棄罪の法定刑よりもかなり重いものになっています。

 また、保護責任者という身分は、真正不作為犯である保護責任者遺棄罪の不保護(刑法218条後段)については犯罪の成立要素です。

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