刑法(死体遺棄罪等)

死体遺棄罪等(6) ~ 本罪の行為③「『領得』とは?」「「損壊」「遺棄」「領得」の行為態様相互の関係(包括一罪 or 併合罪)」を説明

 前回の記事の続きです。

 この記事では、刑法190条の罪(死体遺棄罪、死体損壊罪、死体領得罪、遺骨等遺棄罪、遺骨等損壊罪、遺骨等領得罪、棺内蔵置物遺棄罪、棺内蔵置物損壊罪、棺内蔵置物領得罪)を「本罪」といって説明します。

本罪の行為である「領得」とは?

 本罪(刑法190条)の行為の態様は、

です。

 この記事では、「領得」について説明します。

 本罪の行為である「領得」とは、

所持(占有)を取得すること

をいいます(大審院判決 大正13年10月7日)。

 本罪の成立を認めるに当たり、所持を取得する意思のみならず、さらに死体等につき所有者のごとくふるまう意思が必要であるか否かについては、これを要するとする説もありますが、本罪は財産罪ではないため、財産罪における領得の意思と並列に考える必要はなく、一般的な宗教的感情を保護する本罪の罪質に照らし、不要であると解すべきとされます。

 また、本罪の成立を認めるに当たり、死体等を処分する意思や経済的利益を得る意思も要しないとされます。

 「取得」は、所持の取得であれば直接・間接を問わず、また窃取、詐取、買受けなど、方法のいかんを問いません。

 死体を領得した犯人から、さらにその死体を取得することは死体領得罪に当たるとするのが判例です(大審院判決 大正4年6月24日)。

 死体解剖保存法による解剖や臓器移植法に基づく移植術のためである場合などは、死体の領得は適法とされます。

「損壊」「遺棄」「領得」の行為態様相互の関係(包括一罪 or 併合罪)

 本罪の行為である「損壊」「遺棄」「領得」が接続して行われた場合は、刑法190条包括一罪となります。

 ただし、各行為が日時を異にするなどのため、包括的に評価し得ないときは、それぞれの罪(死体損壊罪、死体遺棄罪、死体領得罪等)が成立し、成立した各罪は併合罪の関係になります。

 この点、参考となる以下の裁判例・判例があります。

東京高裁判決(平成19年8月8日)

 死体損壊幇助と時間的に接着する共謀による死体遺棄の事案につき、刑法190条包括一罪としました。

最高裁判決(昭和27年6月24日)

 殺害の上、埋没遺棄した死体を数か月後に発掘して損壊した事案につき、裁判所は、

  • 一旦死体を埋没遺棄し、数月後更にこれを発掘して損壊する如き場合は、死体損壊罪と同遺棄罪との併合罪が成立する

とし、死体遺棄罪と死体損壊罪の両罪が成立し、両罪は併合罪になるとしました。

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