刑法(凶器準備集合・結集罪)

凶器準備集合・結集罪(4) ~ 凶器準備集合罪③「集合者全員に共同加害目的があることは要せず、二人以上に共同して加害行為を行う目的があればよい」を説明

 前回の記事の続きです。

集合者全員に共同加害目的があることは要せず、二人以上に共同して加害行為を行う目的があればよい

 凶器準備集合罪は、刑法208条の2第1項で、

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 この記事では、条文中にある「共同して害を加える」に関し、「集合者全員に共同加害目的があることを要するか」について説明します。

 共同加害の目的とは、

加害行為を他の者と共同して、すなわち、共同正犯の形において実行しようとする意欲

をいいます。

 したがって、単なる謀議のための集まりはこれに当たりません。

 集合者全員に共同加害行為を行う目的があることを要するという説もありますが、集合者のうち、二人以上に共同して加害行為を行う目的があればよいというのが判例・通説です。

 この点を判示したのが以下の判例です。

最高裁判決(昭和52年5月6日)

 裁判所は、

  • 凶器準備集合罪が成立するためには、二人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して加害行為を実行しようとする目的をもって凶器を準備し集合したことをもって足り、集合者の全員又はその大多数の者の集団意思としての共同加害目的を必要とするものではないと解される

と判示しました。

 二、三人の集合であればともかく、多数人が集合した場合に、全員にその目的があるとは限りません。

 加害目的のない野次馬が一人加わるだけで、凶器準備集合罪の成立要件を欠くということになれば、それは不合理です。

 また、多数人の集合の場合に、その全員の共同加害目的があったことの立証を裁判で検察官に求めることは非現実的であることからも、判例・通説の見解が正しいといえます。

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