刑法(凶器準備集合・結集罪)

凶器準備集合・結集罪(11) ~ 凶器準備集合罪⑩「集合とは?」を説明

 前回の記事の続きです。

 凶器準備集合罪は、刑法208条の2第1項で、

2人以上の者が他人の生命、身体又は財産に対し共同して害を加える目的で集合した場合において、凶器を準備して又はその準備があることを知って集合した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する

と規定されます。

 この記事では、条文中にある「集合」に関し、

  • 「集合」とは?
  • 「準備があることを知って集合した」とは?

について説明します。

「集合」とは?

 集合とは、

二人以上の者が時間・場所を同じくすること

をいいます。

 自発的に集まる場合でも他人の誘いに応じて集まる場合でもよいです。

 共同加害の目的をもった二人以上の者が、場所的に動いて、新しい時と場所を同じくする場合でもよいです。

 また、既に時と場所を同じくしていたニ人以上の者が、共同加害の目的を持つようになり、そのため社会的に1つの集合体と見られるようになった場合でもよいです。

 同一場所に集合したか否かについては、単にその物理的広がりの大小だけではなく、集合体の大きさ、組織力、加害意思の強固性などを総合して判断されることとなります。

 凶器準備集合罪は公共の平穏に対する罪としての性格をも有するものなので、集合は公共の平穏を害し得る態様のものでなければならず、この態様の集合に加わった時点で凶器準備集合罪が成立します。

 参考となる判例・裁判例として、以下のものがあります。

最高裁決定(昭和45年12月3日)

 裁判所は、

  • すでに一定の場所に集まっている二人以上の者が、その場で凶器を準備し、またはその準備のあることを知ったうえ、他人の生命、身体または財産に対し共同して害を加える目的を有するに至った場合は、刑法208条の2にいう「集合」にあたる

と判示しました。

名古屋高裁金沢支部判決(昭和36年4月18日)

 裁判所は、

  • 刑法第208条の2第2項(結集罪)にいう「人を集合せしめ」るとは、必ずしも人の場所的移動を必要とするものではなく、既に集合している二人以上の者に対し同条所定の加害目的を付与して其の目的を共通にさせる場合をも含むものと解すべきである

と判示しました。

広島高裁松江支部判決(昭和39年1月20日)

 裁判所は、

  • 刑法第208条の2第2項にいう「人を集合せしめたる者」とは、既に時と所とを同じくする二人以上の者に対し、同条所定の共同加害の目的を附与し、一個の集合体を形成せしめた者も含まれると解する

と判示しました。

東京高裁判決(昭和39年1月27日)

 裁判所は、

  • 進んで出撃しようとしたのではなくても、相手が襲撃してきた際にはこれを迎撃し、相手を共同して殺傷する目的をもって、凶器を準備し、自己および身内の者が集合したときは、刑法第208条の2第1項の犯罪が成立する(昭和36年(あ)第2709号同37年3月27日最高裁判所第三小法廷決定の趣旨、刑集16巻3号326頁参照)
  • また、刑法第208条の2第1項にいう凶器の「準備」とは、凶器を当該加害目的に使用できる状態におくことをいう
  • 集合の場所と準備の場所とが一致する必要もないが、事実上、当該加害目的に使用されうる状態にあることを要する
  • 凶器の準備は必ずしも集合の前になされることを要しない
  • 集合したのち準備がなされた場合には、準備がなされた時に既遂となる
  • 右条項にいう「集合」とは、ニ人以上の者が共同の行為をする目的で一定の時刻、一定の場所に集まることである

と判示しました。

「準備あることを知って集合した」とは?

 「準備あることを知って集合した」とは、

既に凶器の準備がなされていることを認識して、共同加害の意思で集合するという意味

です。

 「準備者」が「集合者」のうちに含まれていなくてもよいです。

 集合したが、凶器の準備がなされていることを知らなかったときは、凶器準備集合罪は成立しません。

 ただし、集合した後に共同加害目的をもち、凶器の準備あることを知って集合体から離脱しなかった場合は、不真正不作為犯としての「集合」になると解すべきとされます。

 この点、広島高裁松江支部判決(昭和39年1月20日)は、

  • 既に共同加害の目的をもって集合しているものが、何者かによって凶器の準備がなされていることを知った場合は、速やかに右集合体から離脱しない限り刑法第208条の2第1項の罪(凶器準備集合罪)が成立する

と判示しています。

 凶器の準備あることを知って集合した者が、その後自ら凶器を所持した場合、包括して1個の凶器準備集合罪が成立します。

 この点、東京高裁判決(昭和44年9月29日)は、

  • 刑法第208条の2の1項前段所定の凶器準備集合罪にいわゆる「集合」した場合というのは、共同加害の目的であらかじめ自ら凶器を手にして集合した場合ばかりでなく、共同加害の目的で凶器の準備のある集合体に加わった場合に、その後しばらくして初めて自ら凶器を準備した場合をも含むと解するのが相当であって、この後者の場合には、その準備した時点において、凶器を準備して「集合」した者として前記凶器準備集合罪が成立するというべく、右のように集合体に加わった時点以降、自らが凶器を準備した時点までの間において、たとえ集合体中の一部の者により加害行為が開始されたとしても、なお全体として加害目的を伴う凶器準備の集合状態が存続している限り、同罪の成立が妨げられるものではない
  • もっとも、右のように集合体に加わった後、凶器を準備した者については、すでにその参加の時点において刑法第208条の2の1項後段所定の凶器の準備あることを知って集合した罪が成立しているものと解されるが、このような場合には両者は包括して前同条1項の一罪が成立するものと解すべきである

と判示しています。

 集団として凶器を用意していれば、凶器を手に持っていなくても、凶器を準備して集合したと認められ、凶器準備集合罪が成立します。

 この点、東京高裁判決(昭和51年9月16日)は、

  • 出撃に際し、凶器が一人ひとりに配られ、なお補充用の火炎びんも一括して用意されたことの認められる本件のような形態の事案にあっては、これらの凶器全部が、本件集団の共同加害目的を達成するため、その構成員全員の共用の凶器として準備され、全員が凶器全部を共同で所持していたものといって差し支えないから、仮に被告人両名が当時素手のままであったとしても、他の凶器を手にしていたものと同様に、凶器を準備して集合した罪が成立するものと解することができる

と判示しています。

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